いろいろなパーツを組み合わせて自分好みの1台を作る「自作キーボード」について紹介する本連載。打鍵感の要となる「キースイッチ」の入力方式やその一つである「メカニカル方式」の概要をお伝えした前回に続き、今回はそんなキースイッチが自作キーボードの世界で多様な進化を遂げていることをお伝えしたい。
自作キーボード「Fortitude60」作者。自作キーボードの基本から設計方法までまとめた同人誌「BUILD YOUR OWN KEYBOARDs」を執筆。
自作キーボードの作者であり、キーボード関連のニュース動画「ほぼ週刊キーボードニュース」を配信するぺかそとびあっこが、自作キーボードの世界の“入り口”を紹介していく。
2010年代後半ごろから、「メカニカルキーボード」として販売されているキーボードを多く見かけるようになった。いわゆる「ゲーミングPC」と呼ばれるジャンルの人気が高まったことも背景の一つだが、加えて独Cherryが持つ、メカニカル方式のキースイッチ「Cherry MX」の構造に関わる特許が切れたことも大きい。これにより、Cherry MXの特性をコピーしたようなキースイッチや、互換性がありながらも新しい特性を取り入れた新しいキースイッチが、主に大陸系のメーカーから多く登場した。
この記事を書いている段階でも新しいスイッチが誕生しているため、本記事で全てをカバーすることはできないが、比較的入手性が高く、特徴的なものについていくつか紹介したい。
以下に示すのはオリジナルのCherry MXに近い特性を持ったキースイッチたちだ。オリジナルより安価に販売されることもあり、安価なゲーミングキーボードなどに採用されることも多い。
中国Gateronが製造する互換キースイッチ。ラインアップもオリジナルのCherry MXをまねたものが多い(Cherry MX Brown→Gateron Brownなど)。細かいクオリティなどの差分を除けば特性はほぼオリジナルと同じかつ安価なため、コストを重視するならおすすめできる。
中国Kaihua ElectronicsのKailh BOXシリーズは軸の周りが四角い形状で、見た目や打鍵音に独自性を持たせている。シリーズ標準の「Kailh BOX Red/Brown/Black」はそれぞれCherry MXの各色と対応した特性だが、クリッキータイプである「Kailh BOX White」は音を出すための独自の「クリックバー機構」を持っており、他とは異なるクリック音を出すのが特徴だ。内部構造もIP56の防水防じん性能を持つ。
上で紹介した互換キースイッチはCherry MXの軸の色とほぼ対応しているが、これから紹介するものはCherry MXの互換品からは外れた特性を持つ、独自性の高いキースイッチだ。
少し前までは、「赤軸」「茶軸」などと軸の色でメカニカルのキースイッチの分類を十分にできたが、2020年現在は独自性の高いキースイッチが多くあるため、色だけで分類するのはほぼ不可能だ。
主にゲーミングのシーンで、より高速に反応するキースイッチがほしいという人がいるかもしれない。Kailh Speedシリーズはそういった用途に最適だ。ここでいう「高速」というのは、キーを押し下げ始めてから接点が電気的に導通する(反応する)までの距離が短く、比較的浅い位置で反応する。
先ほどは紹介しなかったが、Cherry MXにも「Speed Silver」(銀軸)という名前のスイッチがあり、通常のスイッチの動作点である1.5mmに対して1.2mmと浅くなっている。
Kailh Speedシリーズは動作点が1.1mmとさらに浅く、特性や荷重別に「Kailh Speed Silver/Copper/Gold/Rose Pink」など金属の色の名前を持つキースイッチが販売されている。
このシリーズはキーのストローク(キーを完全に押し下げるまでの距離)が、Cherry MXの4mmに対して3.6mmと浅いことが特徴だ。また、これは個人の感想に近い部分でもあるが、Gateronシリーズと比べるとキーの動きが滑らかに感じられる。
ラインアップには軸の色が濃い「Kailh Pro Burgundy(リニア)/Purple (タクタイル)/Light Green(クリッキー)」がある。
ここから紹介するのは、「互換品」と呼ぶには向かない、かなり特殊なキースイッチたちだ。企業が企画した製品もあれば、キーボードコミュニティーの中で生まれた打鍵感重視のキースイッチもある。このクラスになると、キーボードの最高峰といわれる静電容量無接点方式を超えたと主張するユーザーもいる。
前半の記事を読んで「静電容量無接点方式で自作がしたいのだけどなあ」と思って二の足を踏む読者にも一度は触っていただきたい。
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