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超音波ブレスレットで盗聴を妨害 シカゴ大など開発Innovative Tech

» 2020年04月08日 06時10分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米シカゴ大学とカリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究チームが2019年に発表した「Understanding the Effectiveness of Ultrasonic Microphone Jammer」は、超音波を用い、電子デバイスへの音声録音を妨害(ジャミング)するブレスレットだ。

photo 本システムを用い、スマートフォン、スマートウォッチ、スマートスピーカーのマイクを妨害している様子

 昨今、さまざまな電子デバイス(スマートフォン、スマートウォッチなど)を使って、録音が容易になった。スマートスピーカーに関しては、常に人の音を取り込み記録するため、プライバシーやセキュリティが脅かされているとの懸念もある。

 研究チームが開発したブレスレットは、そんな音声録音を妨害できるものだ。人に聞こえない超音波を放射し、近くのマイクを全て無効にする。

 超音波は、手首に装着する円形の超音波トランスデューサーアレイが備わったスタンドアロン型ブレスレット(重さは91g)から複数の方向へ同時に放射する。

photo スタンドアロン型ジャミングウェアラブルブレスレットのプロトタイプ

 人に装着するタイプを採用したことで、装着者が動くたびに角度範囲が広がり、死角を少なくできる。マイク側が動いてもついていけば途切れないため、既存の技術よりカバーエリア(カバレッジ)を拡大できる。

 録音デバイスが何かに隠れている場合の精度も検証。プラスチックや紙箱で覆われていると精度は低下したが、Tシャツで覆いかぶせても精度はほぼ低下しなかったという。

photo Tシャツの下に隠れるマイクを妨害できるかの実験

 意図しない妨害への対処も必要だ。例えば、補聴器や個人の緊急対応機器を誤って無効化してしまう、自分が話す電話の会話を妨げてしまう――などが発生しないようにすることが今後の課題だ。

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