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“内なる感情”をARで可視化する「Neo-Noumena」Innovative Tech

» 2020年08月26日 09時36分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 オーストラリアのモナシュ大学とロイヤルメルボルン工科大学による研究チームが開発した「Neo-Noumena」は、人の感情をARで可視化することで対人コミュニケーションを支援するBrain-Computer Interface(BCI)システムだ。

photo 脳内の感情を読み取ってARとして可視化することで、対人コミュニケーションを支援する

 Neo-Noumenaはユーザーの脳波データを解釈して、ユーザーの主観的感情体験を分類し、可視化する。ニューラルインタフェースのOpenBCI Cytonアンプに接続した電極キャップで8チャンネルのEEGデータ(脳波)を収集し、そのデータをサーバ経由でHoloLensに伝送する。

photo Neo-Noumenaのシステムアーキテクチャ

 感情の推定は、教師あり学習のサポートベクターマシン(SVM)を用いて分類される。推定した感情は数種類の“フラクタル”パターンとしてARでオーバーレイ表示される。分類された感情は、音声でも伝えられる。

photo 4つのカテゴリに分類されるフラクタル

 これによりユーザーは感情の変化を視覚表現で把握できるため、他者の感情を解釈する助けとなる。

 実験は、ペアになった2人が1日1時間程度、3日間使用した。被験者ごとに異なる、多くの知見が得られた。ある被験者は、相手のイライラやリラックスを事前に知覚できるので、相手を理解するのに苦労しなくて済むと回答。別の被験者は、他人にも感情があることを再認識させられ、感謝する気持ちを思い出させてくれたと述べた。

 相手の感情が気になる一方で、自分の感情を観察することにも関心を持ようになったという被験者がいた。自分を客観的に見て、自分自身を騙していないか、挑戦するときに自分の感情がどう変化するかなどを評価するためのツールとして使えると言う意見も出た。

 ある被験者は、自分を落ち込みがちな人間と思っていたが、ずっと負の感情だけではないことに気が付いたと回答した。別の被験者は、ポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情も客観的に捉え、評価する余裕ができたと語った。

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