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刺繍スピーカー、聞こえる音と超音波を出力 Lo-Fi音楽の再生や通知音に活用Innovative Tech(1/2 ページ)

» 2020年11月04日 07時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 オーストリアのUniversity of Applied Sciences Upper Austriaと米マサチューセッツ工科大学による研究チームが開発した「Sonoflex」は、刺繍を使って布地に縫い付ける薄型円形スピーカーだ。直径50mmのコイル型刺繍スピーカーからLo-Fi(Low-Fidelity)ながら、可聴音だけでなく超音波も出力できる。

photo 直径50mmの円形刺繍スピーカー

 一般的なダイナミックスピーカーは、膜(振動板)やコイル(電磁石)、永久磁石を用い、コイルに電気信号を送ることで振動させ空気を押し出して音を発生させる。

 今回のアプローチでは、永久磁石や導電性の糸を使うのではなく、細くて絶縁された銅線(直径0.15mmのエナメル線)を活用し、ポリエステルのフィラメント糸と一緒に織物として縫い付け、平らな空芯コイル(直径50mm)を作成する。このコイルを2つ作成し、互いに重なるよう配置する。

photo エナメル線で作成したフラットな空芯コイルを2つ重なるように配置する

 コイルは電気信号を受け取り、さまざまな磁場を生成し、引き付けと反発により可聴音波を発する。直径50mmの刺繍スピーカーを使った実験では、平均29.34dB±4.88dB SPLの周波数範囲(1.5kHz〜20kHz)を出力した。

photo システムの概要図

 この方式では従来のダイナミックスピーカーと違い、高い電圧を必要としないため触っても安全だという。コイルは伸縮性があり、ジャージー生地のような柔らかい素材に縫い合わせて引っ張っても壊れたりせず機能する。

photo 縫い合わせたコイルは伸縮性がある
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