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» 2020年11月17日 19時25分 公開

パトロンサイト「Enty」、クリエイターへの支援金を滞納 背景を代表に聞く

パトロンサービス「Enty」を運営するEntyが、ファンから預かった支援金をクリエイターに滞納している。急な支払いが続き資金繰りが難しくなったことが原因としている。

[谷井将人,ITmedia]

 クリエイターがファンから支援金を受け取れるパトロンサービス「Enty」を運営するEnty(東京都渋谷区)が、ファンから預かった支援金をクリエイターに滞納していることが分かった。

photo EntyのWebサイト

 11月10日ごろから、Enty利用者の間で「10月分の支払いが無かった」「問い合わせも通じない」といった声が相次いでいた。取材に対し、Enty社の杉山周重社長は「支払いが遅れているのは事実」と認めた。10月分に続いて11月分も支払いが遅れる見込みという。

 Entyはファンがクリエイターに月額支払い制で支援を行えるサービス。Enty社は支援金の約10%を手数料として受け取る仕組みで、滞納が発生するのは不自然だ。その背景には「前オーナーからの訴訟」「コロナ禍による出金需要の高まり」という二つの事情があるという。

前オーナーから訴訟 支払いに支援金を一部利用

 Entyは、2015年に当時大学生だった武田義基氏がベンチャーキャピタルからの支援を受けて個人経営をスタート。その後、18年に福田拓哉氏率いるWebシステム開発会社のユービジョン(東京都新宿区)が事業を買い取った。

 杉山社長によると、福田氏がサービスのバグ修正や問い合わせ体制の整備などを進めたが、黒字化が難しかったという。その後、ユービジョンでEnty事業を担当していた倉橋孝則氏が独立。ユービジョンは19年1月、倉橋氏にEnty事業を売却した。

 後に倉橋氏が代表を離れ、20年2月から杉山社長が代表を務めている。

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 ユービジョンが倉橋氏にEntyを売却した際は、事業が安定化するまで支払いを猶予するという取り決めだった。しかし、Enty社は8月に福田氏とその弁護士から訴訟を起こされ、買い取り費用を早急に支払うよう求められたという。

 訴訟を受けて、Enty社は保有する法人口座への入金を3カ月分差し押さえられた。これによってEnty社はファンからの支援金を一時的に預かれない状態になった。

 その後、Enty社は資金を集めて福田氏に買い取り費用の支払いをおおむね終えたが、支援金の一部を支払いに充ててしまったという。

支援金が引き継がれないまま、コロナ禍で出金需要高まる

 滞納のもう一つの理由は、コロナ禍による社会不安でクリエイターからの出金が相次いでいることだという。Entyはクリエイターから出金申請を受けた場合に都度、支援金を振り込むシステムになっている。

 ファンから預かった金額の範囲内であれば、Enty社はクリエイターからの出金依頼に応じて支援金を支払えるはずだが、Enty社にはそもそも19年1月の設立以前の支援金が引き継がれていなかったという。

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 杉山社長によると、福田氏からEnty社が事業を買い取った際、「Entyはもともとユービジョンの中でも赤字事業で、立場が低くて強く出られなかった。売買契約が甘く、システムしか承継できなかった」としている。

 その結果、預かっていない支援金をEnty社の社員が立て替えて支払うことになった。引き継がれていない支援金の総額や行き先は不明という。

 福田氏への支払いと受け継がれなかった支援金の立て替えで資金難に陥ったことが、クリエイターへの支払いの滞納につながった。

 一連の流れについて、福田氏にも事実関係の確認を行っているが、11月17日午後6時の時点で回答はない。

Enty社の今後の動き

 Enty社は今後もサービスを続けるとしている。「破産すると支援金を支払えなくなってしまう」(杉山社長)ため、まずはサービスを存続させて責務を果たすという。

 10月と11月の支援金は、クリエイターと相談しながら分割で支払う。12月には通常通り振り込めるめどが立っているという。

 Entyを巡っては、以前から「支援者が1人でもいるとクリエイターは退会できない」という仕様が一部から不評だったという。この意見を踏まえ、11月16日から一定期間、支援者がいるクリエイターの退会を受け付ける。

 資金の調達に向けては、サイトデザインの刷新、情報発信の強化、新サービスの投入などを行うとしている。

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