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無調整でもほぼ人間 AI歌声合成ソフト「CeVIO AI」の実力(2/3 ページ)

» 2021年01月29日 12時30分 公開
[谷井将人ITmedia]

キャラごとの挙動や癖もかなり違う

 CeVIO AIは深層学習技術を取り入れたことで人間らしさを向上させている。13年リリースの無料版「CeVIO Creative Studio Free」とCeVIO AIの音声を比べてみた。

 13年当時から、ニコニコ動画などでは「聞き取りやすい」「何もしてないのに上手」と話題になっていた。AIになる前のCeVIOは、しゃくりのような派手な歌唱表現はそれほど入らず、比較的楽譜に忠実な歌い方をする。CeVIO AIは、キャラにもよるが楽譜に縛られずに歌う印象だ。その分、キャラごとの挙動や癖もかなり違う。

 1月29日発売の「結月ゆかり 麗」は楽譜通りに滑らかに歌う。2月12日に発売する「東北きりたん」や春発売予定の「さとうささら」は、歌唱表現をかなり積極的に入れる。声質や声色の違いだけでなく、表現の方向性が全体的に異なるため、同じ曲を歌わせても印象が変わってくる。

 大浦代表によると、CeVIO AIの音源は、制作の段階で人間に近づけることも、完全に正確に歌う機械的なモデルにもできるという。人間は楽譜に忠実に歌うわけではないため、人間に寄せるとある意味で音痴になり、正確にすると機械っぽくなる。どちらにも需要はあるため、パートナー企業とすりあわせを行いながら、バランスを調整しているという。

 この挙動の違いによって、キャラごとに入力する楽譜の作り方も変わってくる。結月ゆかり 麗は「あーあー」と母音が連続するときに続けて滑らかに歌うが、さとうささらは「あーっあー」のように都度区切るように歌う。滑らかに歌わせるためには、音楽記号「スラー」を適用する必要がある。キャラの癖を理解して、人間が最適な入力を与えれば、その力を十分に引き出せる。

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