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転んでも段差を踏み外しても颯爽と立ち上がる、4足歩行ロボット 深層学習で運動スキル習得Innovative Tech

» 2021年03月12日 12時09分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 英エディンバラ大学と中国・浙江大学の研究チームが開発した「Multi-expert learning of adaptive legged locomotion」は、転倒や段差の踏み外しといった不測の事態で姿勢が崩れても、瞬時に対応して姿勢を戻す4足歩行ロボットを作り出す機械学習フレームワークだ。砂利や小石が並ぶ地上でもバランスを取り安定して歩行できる。

photo 段差で足を踏み外してもバランスを整え正常に戻る一連の様子
photo (A)何らかの障害で姿勢を崩した4足歩行ロボット(B)姿勢を崩した状態から回復する様子(C)歩行中に棒で押され転倒し回復する一連の様子

 日進月歩で進化している4足歩行ロボットだが、予期せぬ状況に対処するための適応行動を自律的に生成する能力は難しく、どの研究チームも四苦八苦している。予期せぬ状況とは、床が滑りやすい、段差、小石や砂利が散りばめられた不安定な地面、横から棒で押されるなどが当てはまる。今回は複数の専門的な運動スキルを一つ一つ学び、それらを統合し適材適所の複合スキルを生み出すアプローチでこの課題に取り組んだ。

 8つの専門的な運動スキルに応じた複数の深層学習ネットワークと、それらを統合する階層型強化学習「Multi-Expert Learning Architecture」(MELA)をモデルとして提案する。学習は、異なるタスクを達成する一連の運動スキルの訓練と、各スキルのパラメーターを統合しまとめて訓練する2段階で構成される。

 訓練したモデルは、環境に適した複合スキルを生成し出力する。ロボットの姿勢が変化するたびに混合し直し、その瞬間に合った適切なスキルをリアルタイムで生成し続ける。

photo 棒グラフは、8つの専門的な運動スキルがどれだけ使われているかを表している

 モデルの性能を評価するため、屋内外でテストした。外部からの衝突、段差からの落下、荒れた地形環境での歩行などを検証し、どれも良好な結果を示したという。転んでも姿勢を崩しても俊敏に回復し、小石が散乱する地形でも問題なく歩行。動画では、4足歩行ロボットが棒や足で押され転んでも滑らかに立ち上がり颯爽と回復する様子を確認できる。

photo 小石が散乱する上を歩行する実験と、横から棒で押されて転倒させられる実験の様子

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