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石油パイプラインを停止させた「ダークサイド」のパワー 身代金目当てに大企業を揺さぶる二重三重の脅しこの頃、セキュリティ界隈で(1/2 ページ)

» 2021年05月17日 08時33分 公開
[鈴木聖子ITmedia]

 米石油移送パイプライン大手のColonial Pipeline Companyがランサムウェア攻撃を受けて一時操業停止に追い込まれた事件では、消費者のパニック買いを誘発して在庫切れのガソリンスタンドが続出し、価格急騰を招くなどの深刻な影響が広がった。この攻撃に関与したとされる「DarkSide」は、大企業を狙って二重三重の脅しをかけ、巨額の身代金を支払わせているハッカー集団。その手口は、増長する「サービスとしてのランサムウェア」(RaaS)ビジネスの実態を見せつけている。

 セキュリティ情報サイトのKrebs on Securityによると、DarkSideが初めて浮上したのは2020年8月、ロシア語のハッキングフォーラムだった。ランサムウェア集団としては比較的新興勢力だったことから、積極的な宣伝を通じてアフィリエート(パートナー)を募り、攻撃を実行させている。

photo Krebs on Security

 狙った企業のネットワークに不正侵入してランサムウェアに感染させ、盗んだデータを暗号化した上で、身代金の要求に応じなければ情報を暴露すると脅しをかける手口は他集団と共通している。

 標的とするのは主に大企業で、NASDAQなどに上場している企業を攻撃できると主張。2021年1月には米国の大企業を脅迫して3000万ドル(約30億円)の身代金を要求し、交渉の過程で減額には応じたものの、多額を支払わせていたという。

 一般的に、ランサムウェア攻撃に遭った被害企業が身代金を支払ったとしても、データを取り戻せるという保証はない。だがDarkSideはそれを逆手に取って、「信用」を売りにする。「(被害者は)われわれに身代金を支払えば暗号解読ツールを受け取れることを知っている。だから身代金の支払いに応じる確率が非常に高く、交渉にかかる時間も極めて短い」。ブログではそう主張しているという。

 被害企業との交渉の過程では、盗んだ情報を小出しにしながら、要求に応じなければ全部暴露すると脅す。分散型サービス妨害(DDoS)攻撃をちらつかせる。株で儲けようとする投資家が被害企業の株価下落を見越して空売りできるよう、事態が公になる前に被害企業の情報を売ることもできると公言する。盗んだ情報の中からサイバー保険に関する情報を見つけ出し、被害者が受け取る保険金の額を知った上で、身代金の減額を拒む。

 相手にそんな揺さぶりをかけながら、身代金の支払いへと追い込む手口をセキュリティ各社は紹介している。

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