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炭酸飲料の刺激を強化するコップ 飲むと同時に電気刺激 法政大学が開発Innovative Tech

» 2021年07月19日 11時32分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 法政大学の研究チームが開発した「電気味覚を活用した炭酸飲料の刺激増幅機能を有したコップ型デバイスの開発」(PDF)は、コップに注いだ炭酸飲料を飲むと同時に舌に電気刺激を与え、炭酸の刺激を増強させるシステムだ。

photo システムの概要

 炭酸飲料は、炭酸水に含まれる溶存炭酸ガスによる刺激を舌や口腔内の三叉神経で取り込み、脳に伝達して清涼感や爽快感を得る仕組み。

 しかし、炭酸飲料は一度封を開けると時間の経過と共に炭酸ガスが抜け、口腔内への刺激が弱くなったように感じ、清涼感や爽快感は薄れる。この研究は炭酸飲料を飲むと同時に舌部に電気刺激を与え、炭酸刺激を増幅させるアプローチで清涼感や爽快感を維持するという。

photo

 これまでの研究により、舌部に電気刺激を付加すると電気味覚が得られ、酸味が強く感じるなどの味の増強が確認されている。炭酸刺激は口腔内の酸味を感じる味細胞も活性化させる。そこで、炭酸飲料を飲むと同時に舌部への電気刺激を付加し、発生する電気味覚によって炭酸が増幅するかどうかを検討した

 被験者11人で行なった実験では、全員が炭酸刺激の強さは増幅したと回答し、電気刺激による炭酸刺激の増幅効果が確認できた。

photo 電気刺激を舌に与え、発生した電気味覚で炭酸刺激が増幅するかを実験している様子

 

 この研究結果を踏まえて、今回は炭酸水を注いで飲む、非導電性コップの電気味覚デバイスを開発した。

 コップの持ち手部分には銅でできた外部導電部を、コップの底部分には内部導電部を貼り付け、それぞれを電気刺激生成回路の陽極側導線と陰極側導線に接続する。コップ下部には入力信号生成回路と電気刺激生成回路、オペアンプへの電源電圧供給回路を内蔵する。本来のコップと変わらない小型な外観を目指したという。

photo 電気回路の概要

 炭酸飲料をコップに注ぎ取っ手を持ち口を付けて飲むと、電気は内部導電部、飲料、舌、手、外部導電部を介して流れ、電気回路として機能する。これにより電気刺激が与えられ、炭酸が増幅した錯覚が提供される。微炭酸を強炭酸に調整する活用も行えるという。

 今後は、電流量や周波数を変えた時の炭酸刺激の変化を調査するとともに、基本の5味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の変化も評価したいという。

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