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スマートスピーカーの成功を見ずに終わった「Chumby」が見せた可能性デジタル・イエスタデイワンスモア計画(2/3 ページ)

» 2021年09月30日 10時40分 公開
[甲斐祐樹ITmedia]

発売前から日本でも話題を集めるも3年で営業終了

 OSにLinuxを搭載し、ソフトウェアだけでなく電子回路などもインターネットで公開されているオープンソースハードウェアであることもChumbyの特徴だ。モバイル機器向けの「Flash Lite 3.0」に対応しており、ウィジェットは自由に開発できた。

 自由度の高さから、日本発売を前に大量購入するユーザーや対応のウィジェットや自作のカスタマイズを行うユーザーも現れるなど、ネットユーザーの一部では大きな注目を集めたChumby。2008年の10月に国内販売を開始した際には、国内ユーザーの盛り上がりを受け、Chumby開発者が来日するブロガーイベントも開催されるほどの人気ぶりだった。

 1年後の2009年には新モデルとして「Chumby One」が登場。ディスプレイサイズやWi-Fiなど基本仕様はそのままにプロセッサを強化したモデルだが、Chumbyの特徴でもある皮の筐体は採用されず、いかにもガジェットといった外観となった。

 翌年の2010年にはソニーからChumbyをベースとした「Sony Dash」というデバイスが発売されるなど、他社メーカーにも広がりを見せるかと期待されたChumbyだったが、その後Chumbyは失速。翌2011年にはディスプレイを8インチに大型化した「Chumby 8」が発売されたが、同年にChumby Industriesは営業を終了、その後は有志によってサポートが行われている状況だ。

photo 2010年に発売されたSony Dash

居場所を失ったChumby

 登場時にはガジェット好きを中心に注目を集めたものの、その後思うようには事業が進まなかった理由は、スマートフォンの影響が大きいだろう。

 Chumbyがリリースされた当初のスマートフォンは前述の通りiPhone 3Gが登場した時期。その頃のiPhoneといえばアプリは立ち上げてもすぐに落ち、コピー&ペーストもできないようなレベルだったが、毎年発表される新モデルで急速にクオリティーを上げ、今では生活必需品の域にまで達しているのはご存じの通りだ。

 性能面でも毎年のように性能を上げていくスマートフォンに比べ、据え置き型かつ買い切りのガジェットであるChumbyは同じレベルで品質を上げていくのは難しい。また、Chumbyでできることのほとんどはスマートフォンでも代替できてしまう。

 そしてChumby最大のポイントは「据え置きである必然性」に乏しかったことだろう。Chumbyでできることのほとんどはスマートフォンでもできることばかりで、毎日持ち歩くスマートフォンに比べると、Chumbyをわざわざ使う必要性も薄れてくる。

 デジタルフォトフレームや音楽プレーヤーといったガジェット的な機能も持ってはいるものの、それだけのためにChumbyを使うのであればもっと他にも魅力的な製品がある。製品自体は非常に画期的ではあるものの、「タイミングが悪かった」のだろう。

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