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「人間関係構築が難しい」「ITに無縁なんだけど」――テレワークの課題にIT企業代表者はどう答えるか

» 2022年04月07日 18時00分 公開
[谷井将人ITmedia]
photo レノボ・ジャパンのデビット・ベネット社長(4月7日の発表会にて)

 もう2年以上続いているコロナ禍で、テレワークもかなり浸透してきたが「人間関係構築が難しい」「ITに無縁の企業はどうすれば」といった課題も存在する。4月7日、この疑問にテレワークで使うツールやサービスを提供するIT企業4社のトップが集まり意見を出し合った。

 参加したのはレノボ・ジャパンのデビット・ベネット社長、Zoomを提供するZVC Japanの佐賀文宣社長、サイボウズの青野慶久社長、ノーコードツールのアステリアの平野洋一社長。同日に開催した発表会で、企業や地方自治体がテレワーク時代においてやるべきことについて質問に答えた。

質問「テレワークだけでは人間関係構築が難しい」

―― リアルな場での人間関係が無いと、テレワークだけでは関係性構築が難しいのでは?

photo ZVC Japanの佐賀文宣社長(4月7日の発表会にて)

ZVC・佐賀社長 リアルな時間はすごく重要で、その時間を作るために普段の業務を効率化した方がいいです。浮いた時間で大切な人に会いに行って熱意を伝えるのが“いい世界”じゃないかなと思います。

レノボ・デビット社長 テレワークのいいところは(勤務場所の)自由度です。例えば月に1回、週に1回程度、従業員が集まる場を作って、フェイトゥーフェイスのコミュニケーションをキープするのも重要だと思います。

アステリア・平野社長 私もリアルに会うのは大切だと思っています。特に最初の関係構築ですね。新入社員や中途社員などは大切で、だからこそ働き方やオフィスの多様化が重要になります。必ず本社に行かないと会えないのではなく、各自の自宅近くで会うとか、リゾート地で会うとか、会う場所の多様化も推進できると考えています。

サイボウズ・青野社長 テレワーク用ツールの上でも、もっと情報の発信や共有をやっていけば、オンラインでも意外と人間関係ができると思います。リアルにあったからって仲良くなる訳じゃないですよね。SNSで知った人とも仲良くできる訳で……。もっと密度高くオンライン上でコミュニケーションを取ることで人間関係は強化できると思います。

質問「無縁の企業はどうすれば」

―― 古い中小企業には町工場や商店も多く、IT系企業と違ってテレワークと無縁です。どうすればいいですか?

photo アステリアの平野洋一社長(4月7日の発表会にて)

ZVC・佐賀社長 例えばビデオ通話をしようとすると、スマートフォンなどのデバイスを操作するリテラシーが必要になります。このハードルを下げていかないといけないかなと思います。

 例えば、工場にもホワイトボードはありますよね。そんな感覚で、複雑な操作のいらないデバイスを置いて気軽にアドバイスがもらえるような、普段の業務の一部に単純なシステムを入れるところから始めるのがいいと思います。

アステリア・平野社長 モバイルの活用です。新たにPCを導入しなくても、今お持ちのスマホをどんどん使っていくというように、少しずつでも始めることですね。イチゼロではなく、できるところから初めて行くと。

 また、中小企業では自前でシステムを作れないという話もありますが、ノーコードツールがあります。プログラムを書かなくても自社にあったことができるツールは増えていますから、これを使っていけば小さな企業でも地方でも可能だと思います。

レノボ・デビット社長 レノボにも工場があって、現状テレワークができていないところもあります。その代わり、工場に行かなくてもいい作業はテレワークでできるようなフレキシビリティーが大事です。5年後、10年後にはXR技術とロボットを使って、工場勤務でもテレワークできるようになる日も来るんじゃないかなと思っています。

サイボウズ・青野社長 まず、エッセンシャルワーカーと呼ばれる人の中でも、現場仕事の中に「この仕事は家でできるよね」という仕事があると思います。例えば引っ越し作業の場合なら現地に行かないといけないけど、見積もり作業は自宅でもできるとか、会議出席や報告書提出のためだけに出社しなくてもいいとか……。全ての仕事を現場でやらないといけないわけじゃないです。

 テクノロジーを使うとビジネスモデルをシフトする事もできます。サイボウズではオンプレミス環境向けにソフトウェアを売っていたころは、顧客企業にサーバを置かないといけませんでした。そうすると当社のエンジニアが現場に行く必要があります。

 クラウドにビジネスモデルをシフトすればお客さまのところに行かなくてもよくなります。例えば塾でも、オンライン化すればテレワークできるようになりますよね。仕事を見直していくと、エッセンシャルワーカーの中にも実はテレワークできる人が増えていきます。そういう観点でデジタル化に取り組んでいただけるといいのかと。

質問「テレワーク移住者を地元に呼び込むには?」

―― 完全テレワークが可能になっても大都市圏に住みたいという意見もある。地方都市が移住者を呼び込むにはどんな施策が必要か。

photo サイボウズの青野慶久社長(4月7日の発表会にて)

サイボウズ・青野社長 都会でも地方でも技術的なハンディは無くなっています。では何で選ばれるのか。一番大事なのは“人”です。例えば、移住したときに「おまえよく来たな。俺たちのコミュニティーに入れてやる。飲み会に来て酒をついで回れ」といわれたら――そんなところ行きたくないですよね。

 オープンでフラットな文化を持った地方が選ばれます。そういう風土を作るリーダーがいることが大事だと思います。例えば、徳島県の神山町は今、移住者が増えて人気の街になりつつあります。行ってみると人徳のあるリーダーがいて、その人のコミュニティーに入りたい気持ちになります。

 私の実家は愛媛県の今治市ですが、今治は全国の人口流出ランキングで上位に来るような街でした。最近は人気が出てきてるんですよ。サッカー監督の岡田武史さんが今治で街を盛り上げていて、彼が作り上げている文化に触発されて人が集まりつつあります。

 さまざまな人達をフラットに受け入れられる風土を作ることが地方にとって大事なことなんだとおもいます。それを頑張れば都会と戦えます。

アステリア・平野社長 私も熊本出身で、当社の熊本オフィスでも7人中4人が移住組なのですが、県の方々と話したことがあります。

 地方自治体の方々は環境のいい田舎をアピールしがちです。熊本なら阿蘇や天草などですね。

 これは、どこでも働けることとワーケーションをごっちゃにしているんですね。(テレワーク移住者は)観光に行きたいわけではなく、環境がいいところで仕事がしたいわけです。だから、当社の移住組4人は熊本市内に住んでいます。

 地方都市は非常にコンパクトでごちゃごちゃしておらず、通勤もすぐで住みやすく働きやすいんですね。

 地方だからと行って観光地をアピールするんじゃなくて、都市のアピールをするともっと働きやすさが伝わるんじゃないでしょうか。

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