2022年1月19日、政府は令和4年(22年)のIT導入補助金(正式名:サービス等生産性向上IT導入支援事業)の概要について公表しました。
今回の施策では、企業間における取引のクラウド化拡大やデジタル化の推進、インボイス制度の導入や、新たな類型(「デジタル化基盤導入類型」)などが大きなポイントとなっています。特に、これまで対象ではなかったPCなどのハードウェアも追加されました。
本記事では、IT導入補助金で強化されたポイントを中心に、メリットや交付に必要な準備、注意点を詳しく解説します。
今回公表された内容は、21年12月に成立した21年度補正予算の中で言及されていたものです。
IT導入補助金は、中小企業などがITツール導入を推進することを目的とし、そのために必要となる経費を経済産業省が補助する取り組みです。20年度からは新型コロナウイルス感染症対策に焦点をあて、特別枠の創設や、業務を非対面化するツールの補助対象化など、様々な取り組みが示されてきました。
IT導入補助金は、企業活動における日々のルーティン業務を効率化させるITツールや、情報を一元管理するクラウドシステムなど、企業が自社の生産性向上のために、業務プロセスの改善効率化に資する汎用的なITツールの導入に活用できる補助金です。
多くの中小企業に今後の取り組みが求められるIT化・デジタル化を推進するためには、このIT導入補助金の活用が非常に有効であり、大いに注目されています。主なメリットは以下のとおりです。
今回の補助対象となるのは、企業が業務効率化やDXのために導入するITツール等の費用です。導入する各種のITツールは、ITベンダーなどを中心とするIT導入支援事業者が事前に登録したツールの中から選択します。
対象項目としては、ソフトウェアやクラウドサービス利用料だけでなく、導入に必要なコンサルティング費用や教育費用・保守費用なども挙げられます。これに加え、ハードウェアに関する費用も一部補助対象となるよう拡大されています。
また、商業集積地などで密に連携した複数の中小・小規模事業者によるITツール・機器の導入を支援するため、複数社連携型IT導入枠が設けられ、データ共有・活用などの取り組みにも支援が行われます。
支援の対象は全国の中小企業等ですが、個人事業主や社会福祉法人、医療法人、学校法人や、下記のような団体も申請が可能です。
22年度の施策から、前述したとおりPCなどのハード類も対象となります。従来、IT導入補助金ではソフトウェアの導入費用が対象で、PCなどのハードウェアの購入費用は対象になっていませんでした(21年度では一部の類型でハードウェアのレンタル費用のみ対象)。
それが今回からはPC・タブレット・レジなど、後述する「インボイス制度」への対応に欠かせないハードウェアも補助対象となります。
補助対象経費となるのは下記のとおりです。
基盤導入経費
消費動向等分析経費
参画事業者のとりまとめに関する事務費・専門家費
22年度における改定の大きなポイントとして、クラウド利用料の対象期間が拡大されることが挙げられます。従来は、補助金の対象となるのは補助期間の1年間だけでしたが、今回はクラウド利用料の2年分が対象となります。
IT化が進む現在、多くのITツールは、ソフトを一括で購入するのではなく、毎月一定額の利用料を支払うクラウド形式が主流となっています。しかし、従来は補助期間の制限により、利用料の補助が受けられるのは最初の1年間だけでした。
今回は、インボイス制度の導入に向け、会計ソフトなどの刷新をより一層促進させるため、クラウド利用料の2年分が補助対象となったものです。
22年度におけるIT導入補助金の更なるポイントとして、23年10月から始まる「インボイス制度」への対応が挙げられます。
インボイス制度とは、適用税率やインボイス制度の登録番号など、必要となる要件を記載した適格請求書を交付・保存する制度です。
問題となるのは、預かった消費税から支払った消費税を控除する「仕入税額控除」が認められるのが、適格請求書を発行する消費税課税事業者との取引に限られることです。
これまで売上1000万円未満のため消費税免税事業者だった中小企業も、取引先からの求めによって消費税課税事業者に変更せざるを得ないケースが多く発生することが考えられます。
また、免税事業者から課税事業者に変更すると、会計処理が大きく変わることになるため、会計ソフトなどの見直しも必要となってきます。
今回のIT導入補助金では、こうしたインボイス制度への対応のための内容が盛り込まれています。
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