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進化したAIによる成果物の権利は誰のもの? Midjourneyだけではない、小説、映画、音楽で既にAI生成物は広まっているプラマイデジタル(1/2 ページ)

» 2022年08月12日 08時38分 公開
[野々下裕子ITmedia]

 人間がAI(人工知能)と違うのは創造力=クリエイティビティがあることだ、とよく言われるが、AIの急速な進化によってその考え方は変わりつつある。

 AIを創作に生かそうという研究開発はあらゆるジャンルで進んでいる。作画の分野では文章から画像を自動生成するAIが次々に登場し、画力の高さが話題となっている。Googleの「Parti」や「Imagen」をはじめ、非営利団体のOpenAIは「DALL-E 2」のベータ版をリリースし、公開されたばかりの「Midjourney」はAIが作成した作品をCreative Commons 4.0 by-ncライセンスで利用できるサービスとしても注目されている。

 日本語版のAIも登場するようになり、日本マイクロソフトから独立したAIキャラクター「りんな」は、著名な絵画をモデルにGANを応用してテキストから画像を描く創作活動を始めている。作品はアニメ「BEASTERS ビースターズ」でYOASOBIが唄うオープニングの背景画に採用され、現代イラストレーションを紹介する作品集にも掲載されている

photo りんなが生成したイメージ

 小説の分野では日本経済新聞が主催する星新一賞が、AIを使用した作品を募集の対象にしていることがSNSで話題になった。星新一氏の作品を解析してAIにショートショートを書かせようというプロジェクトは、星新一賞が始まる前年の2012年にはこだて未来大学が始動しており、それから10年の年月を経た今年2月に、AIを使用した作品が初めて入選したと発表されたところだ。

 さらに、文章の書き出しを入力すると小説の続きをAIが書いてくれる「AIのべりすと」、あらすじや設定などを元にAIとリレー形式で小説をゲーム感覚で書くことができる「AI BunCho」なども登場している。

 また、東京大学AIセンターの松原仁教授を中心に研究開発を行うAlesは、あらすじを入力すると起承転結のあるストーリーを生成する「フルコト」をリリースし、出力されたシナリオを元に製作された短編映画も公開されている

photo フルコト@Ales

 英語圏ではそれより以前の2016年に、AIが書いた脚本を元にしたSFショートムービー「Sunspring」が公開され、ハリウッドやTV業界に大きなインパクトをもたらした。今やクリエイターがAIを活用するのは当たり前になり、新しいツールが次々と生み出されている。

 作曲の分野ではそれ以上に数多くの自動生成ソフトウェアやアプリが公開されており、写真や動画に自動でBGMを付ける機能も珍しくない。業界でも新しい試みをしており、メロディやコード進行を自動生成する楽曲作成アプリ「FIMMIGRM(フィミグラム)」で作曲した曲に、SNSで募集した歌詞付けてNFTで販売するという動きもある

 売れる音楽のメソッドはある程度確立されているので、AI研究者の中にはGTTM(Generative Theory of Tonal Music)のような音楽構造分析理論を用いて誰でも名曲が作れるAIを開発するのは難しくない、という意見もある。

 現時点ではまだAIの創作活動に人が手助けしている状態だが、AIが完全に自律して作品を自動で生成するようになる日は遠くないだろう。だが、そうなった時に作品の所有権はどうなるのか、という悩ましい問題が生じる。アーティスト兼デザイナーのセバスチャン・エラズリッツ氏は、「注文通りの絵が描けるAIの登場でイラストレーターは真っ先に仕事を追われかねず、AIを活用するクリエイティブの価値をどう考えるかはとても重要だ」と述べている

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