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進化したAIによる成果物の権利は誰のもの? Midjourneyだけではない、小説、映画、音楽で既にAI生成物は広まっているプラマイデジタル(2/2 ページ)

» 2022年08月12日 08時38分 公開
[野々下裕子ITmedia]
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人工知能学会で語られたこと

 6月に京都で開催された人工知能学会全国大会(JSAI 2022)の企画セッション「AIによるクリエイティビティと著作権」では、人工知能学会倫理委員会の委員およびAI研究者と技術者、ゲームAI開発者、法学者らが参加し、創造的なAIによる成果物の権利について、さまざまな立場からさまざまな意見が交わされた。

 100分間のセッションで、背景となるAIの研究開発の現状やどのような分野でどのようにAIのクリエイティビティが活用されているのか、あらためて紹介され、それだけでもすごい情報量になっている。

 興味深かったのは自動学習機能を持つ高度な自律型AIが互いに学習して進化し、生成されたコンテンツの著作権は、システム開発者もデータ提供者も関与が薄くなり、AI自身に著作権があると考えられるようになるかもしれない、という意見だ。もし、ボタンをクリックしただけで自動生成された絵画作品に億単位の値が付いたとしたら、ボタンを押した人に所有者は生じるのかという裁判が起きてもおかしくない。

 AI自身に所有権が生じるかという問題についても、ある特許出願でAIを共同発明者として認めるという裁判結果がオーストラリアで出ている(この判決は後に覆されている)。今のところはまだAI単独で権利が認められたわけではないが、AIがどれだけ関与すれば権利が認められ、人はどうやってその権利を管理するのかといった、時代を見据えた新しい知的財産権を”世界共通ルール”として作る必要があるというのはまちがいだろう。

 とはいえ、そんなルールづくりが簡単にできるわけではない。セッションに登壇した弁護士の福井健策氏は「法律は本質的に周回遅れなので、今のところはコンテンツに対して規約やガイドラインを設けて倫理的に解決する方法が望ましいだろう」としている。

 印象的だったのは、どんなルールや法律ができたとしても、クリエイティビティの健全な発展につながり、最後にがんばった人が報われるような方向であってほしいというという意見が出されていたことだ。そうした公正さの判断こそAIによって実現できそうなのだが、その議論はまた別の場所で行わることになりそうだ。

 「AIによるクリエイティビティと著作権」のセッションは下記で公開されている(1年間限定)

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