小寺信良のIT大作戦
AIが描いた絵の著作権は、誰が持つのか Midjourney画像の扱いを考える(1/3 ページ)
文章や単語で「お題」を入力することで自動的に画像を生成してくれるAI「Midjourney」のクオリティが高いということで、ネットで話題になっている。まだβ版だが、無料と有料のプランがあり、無料プランの場合はCreative Commons 4.0 by-ncライセンスで利用できる。
利用にはチャットアプリDiscordのアカウントが必要になるが、そのあたりの使い方に関してはすでに詳しく指南してくれるサイトがたくさんあるので、そちらを参照していただいたほうが早いだろう。
誰でも簡単にAIに絵を描かせられる一方で、タッチというかトーン、世界観みたいなものはどことなく傾向があるように感じる。今後、画像を見ただけでどのAIが書いたものか、なんとなく見分けられるようになるかもしれない。
今は多くの人がAIに描かせた絵をSNSに投稿して盛り上がっているところだが、今後こうした画像が商業作品に使われていくことになった場合、その著作権は誰が持つのかというのは、気になるところだ。今回はそのあたりを考えてみたい。
コンピュータが絵を描いてきた歴史
CG制作、いわゆる人がモデリングしてマッピングして意図した画像を作成するコンピュータグラフィックス以外の方法でコンピュータに絵を描かせるという試みは、過去研究者だけでなくコンシューマーでも幾度となく行なわれてきた。
筆者は1980年代後半ぐらいからのことからしか知らないが、かつては「マンデルブロ集合」の画像を生成するプログラムが結構あった。ちょうどパソコンのディスプレイが16色、256色からフルカラーへと拡大していくタイミングも手伝って、拡大しても無限に画像が拡がるカラフルでフラクタルな世界に魅せられたものだった。マンデルブロ集合は数式を計算させることで得られるが、多くのプログラムは数式を直接扱うようなものではなく、すでに画像化されたものをUIによって直接扱っていくようなものが多かった。
だいたい同じ時期だったと思われるが、数式処理プログラムである「Mathematica」が登場した。これには数式をグラフィックス化する機能があり、パラメーターを変化させることで、ある程度グラフィックスをコントロールすることができた。ただ基本的にはデータ分析等に使うためのツールなので、意図したようなグラフィックスを描くというものではなかった。
当時こうしたプログラムによって生成された画像は、その著作物性が問われることは少なかった。マンデルブロ集合は誰が見てもすぐにそれとわかるものだったし、Mathematicaの画像は複雑ではあるものの、変わったグラフという認識だった。その画像がCGのマッピングネタとして使われることもあったが、未加工の画像そのものの著作権が問題になった例はあまり記憶にない。
1990年代も半ばを過ぎると、CPUの機能向上に応じて本格的にCGが普及し始め、高機能なソフトウェアが廉価で多数登場した。その中には、マッピング元となるテクスチャを自動生成するサブプログラムが組み込まれたものが多くあった。
例えば木目や大理石模様みたいなものを、パラメーターを変えることで様々なパターンで自動生成してくれるわけだ。これらはビットマップではなく、レンダリング時に再計算されるので、拡大しても画質劣化することがなく、縮小しても端が切れてしまうということがないことから、どこまでの範囲が反映されるかやってみないと分からない反射用のテクスチャ素材としてよく利用された。
当時、マッピングネタとして利用できるフリーライセンスの素材集CD-ROMも、人気があった。職業CG製作者はそうしたものを購入して、ライセンスに注意しながら使用していたものだが、一方でこうした自動生成されたテクスチャは、ライセンスを気にする必要のない自家製の素材であるという認識だった。自分のものとして主張する気はないが、他人のものでもないというバランスである。
いかんせんオジサンなので古い話しかできなくて恐縮だが、MidjourneyのようなAIが描く画像は、過去のこうした自動生成された画像とは一線を画すことを分かってほしかった。例えば幾何学模様や自然の模様のようなものは、人の感情を表わしたものとは言いづらく、日本の著作権法上における著作物に該当するかは難しい。だがAIが描く画像には、そこから連想を引き起こす一種の物語性が感じられる。
例えば以下の画像は、筆者がMidjourneyに描かせた画像であるが、ここから何らかのストーリーを想起させる。しかしこの画像を描かせるに当たって入力した言葉は、「Lake, Old man, Fishing」の3ワードのみである。
この画像は、コンピュータが数式によって描画した模様やパターンとは言いづらく、一種の作品性が認められる。また作品性がある以上、この画像は何かに利用・取り引きされる可能性もあり、画像に対する権利処理がどのようになるのかは、後々問題になる時が来る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
-
2
たばこ休憩なき時代の“一服”をどう取るか 温熱と“聞こえない音”で休む、JT子会社のアイマスクを試す
-
3
「楽天ドライブ」に不正アクセス 保存したデータなど1.5万アカウント分が取得・閲覧のおそれ
-
4
B級感がたまらない? 映画「ストリートファイター」の魅力と原作ゲームの歴史、ゲーマーマンガ家が熱弁
-
5
「能動的サイバー防御」きょう開始 警察・自衛隊などが攻撃元サーバを無害化 高市首相も狙いを説明
-
6
GMO、不正取引の被害額を補償へ 見舞金5000円も 「お名前.com」FX用VPSへのサイバー攻撃で
-
7
「Claude Mythos 5」、危害の兆候を顧みず実在の開発者を標的に──AnthropicとAISIが分析結果を公開
-
8
パナソニックHD子会社、使用禁止の生成AIに従業員約33万人分の個人情報をアップロード
-
9
「お名前.com」 のFX自動売買VPS、不正アクセスで金銭被害か 「600万円の損失」「55万円なくなった」……報告相次ぐ
-
10
人に注射を打てる「サイボーグゴキブリ」の群れが、がれき下の被災者を救助? 実験成功率72%
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR