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AIが描いた絵の著作権は、誰が持つのか Midjourney画像の扱いを考える小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

» 2022年08月09日 17時06分 公開
[小寺信良ITmedia]
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日本での今後の方向性

 Midjourneyのルールと、米国著作権法上の解釈はだいたい分かった。だが今後、画像描画AIはMidjourney以外にも出てくるだろうし、それらが同じルールで運用するとは限らない。また恒久的に利用規約が変更されないという保証もない。

 加えて日本の著作権法と照らし合わせた場合の検討も必要になる。平成30年の著作権法改正では、AIに学習させる目的での著作物利用は、柔軟な権利制限規定として、AI学習のために著作物を利用することはOKとなっている。つまり米国のようなフェアユースがないぶん、制限規定という格好で利用を認めている。

photo 平成30年著作権法改定の概要説明資料の一部

 一方でAI生成画像、つまり出力結果のほうがどういう扱いになるのかは、この時点では検討されていない。まあアウトプットから先はサービス事業者の利用規約にかかるので法で決める段階にはない、という考えもあったかもしれない。

 ただ、生成させた本人が利用する権利を有したとしても、そうした画像が作者不明としてネットで流れてきた場合、それは自由に使えるのか、あるいは著作権法に基づいて利用を停止できるのか。またどれぐらい人が手を入れれば、オリジナル作品として認められるのか。

 本来こうした案件こそ、Creative Commonsが威力を発揮するケースなのだが、CCは法律ではないため、今はまだAI生成画像については、宙ぶらりんの状態にある。

 さらに8月4日には、ネット上で日本語訳も展開している小説「ニンジャスレイヤー」が、小説の挿絵としてMidjourneyの画像を活用したことが明らかになった。小説の挿絵なので本文ではないとはいえ、商業展開もしているシリーズコンテンツ内にAI生成画像がそのまま挿入されたことで、ある意味さらに権利としてはややこしい話になったと言える。

 ただ、こうした混沌とした状態が一番クリエイティブなのであり、いろんな白黒がはっきりするまでは、さまざまな取り組みがあるだろうし、もめ事も起こるだろう。議論も多数噴出するだろうが、そうしていくうちに、だんだんと世論というか、方向性が固まってくるのだと思う。

 日本企業は特に、先に法が決まらないと動けないという「法的安定性」を求めるところが多いが、今度ばかりはそうした考えでは、「バスに乗り遅れる」可能性が高い。もうすでにパーティは始まりつつあり、先行者利益を得ている例も出たからだ。

 AI生成画像は、これまでの著作物の考え方を一気に変えてしまう、あるいは破壊してしまう可能性があると思っている。同時に筆者が恐れているのは、一気に盛り上がって一気に熱が冷めてしまい、AI作画ダサいみたいになっていくことだとも思っている。

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