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AIが描いた絵の著作権は、誰が持つのか Midjourney画像の扱いを考える小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2022年08月09日 17時06分 公開
[小寺信良ITmedia]

米国での判断

 まず当たるべきは、Midjourneyの利用規約である。利用規約のCopyrightの項目には、概ね以下のように記されている(筆者抄訳)。

  • ユーザーがMidjourneyに与える権利

”ユーザーが本サービスに入力したテキスト、イメージプロンプト、生成物云々等を、複製、派生物の作成、公的に掲示、配付するための権利および著作権を許諾する”

  • ユーザーの権利

”上記のライセンスに同意する限り、本サービスを利用して作成したすべての資産を所有する”

 細かい例外規定も書かれているが、大筋はこうなっている。これはSNS等の規約と似た設計だ。Midjourneyで作られた画像は、基本的にユーザー側がすべての権利を保つが、サービス側が自由に使うことがありますよ、と。

 使ったことのない人には「イメージプロンプト」の意味がわかりにくいが、Midjourneyに描画させるには、メッセージ欄に“/imagine” と入力し、出てきたコマンドプロンプトに対して文章なり単語を区切って入力する必要がある。そのプロンプトに入力したものも対象になる、と言っている。

 Midjourney側がこれらの権利許諾を求めているのは、ユーザーの画像でビジネスをやるというよりも、サーバを増強したりデータをミラーリングしたりする際に、権利が絡まっていると困るからという側面が強い。これは他のネットサービスでも見られる措置である。

 もう少し踏み込んだ情報として、Midjourneyの創立者であるデビッド・ホルツ氏のインタビューが、The Registerというサイトに掲載されていた

 著作権関係の部分は氏のインタビューではなくメディアの取材原稿となっているが、そこを引用すると、

”現在米国の法曹界ではAIで生成された画像に著作権を付与する可能性は低く、著作権審査委員会では、過去2回申請が却下されている。また同委員会は、単にテキストをタイプしただけでは保護の対象にはならないが、一方でAIが生成した画像に人間が手を加えて作品を制作したなら、それは著作権が認められるだろうとも言っている。”

とある(筆者抄訳)。

 加えて記事では、別の視点も指摘している。それは、AIが学習する過程に置いて、著作権で保護されている画像を使用していることで、ジェネレートしたユーザーに著作権侵害の可能性が及ぶか、という視点だ。これに対しては、米国では「フェアユース」があるので、それに照らし合わせればAIの学習が著作権侵害となる可能性は低く、ユーザーが侵害を問われる可能性も低いという。

 ただ、AIの学習が浅い場合、出力された画像が学習した何らかの著作物に近くなる可能性があり、その場合は侵害となる可能性もあり得るとしている。

 これは人間がコンテンツを制作する場合もほぼ同じことが言える。参考にした著作物が少なければそれに似てしまい、盗作や贋作といった誹りは免れないが、十分に多くの著作物から学んでアウトプットした場合は、何らかの影響はその断片に感じさせても、オリジナルと判断されるだろう。

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