量子ベンチャー、blueqat(ブルーキャット、旧MDR)のCEO、湊雄一郎さんは3月9日、エンジニア向けの情報共有プラットフォーム「Zenn」で、量子コンピュータが「かつてないほどの不透明感に包まれている」と指摘した。2026年は、エンジニアが量子技術一本にキャリアを賭けるのはリスクが高いという。
理由は環境の変化だ。数年前までは量子コンピュータは科学計算や最適化、暗号解読といった特定の領域で“救世主”になるといわれていた。しかし、生成AIの爆発的な進歩が、その前提を根底から覆した。
高度に最適化されたAIモデルと「暴力的なまでの計算リソース(GPU)」が投入され、それら特定の領域でも生成AIは存在感を増している。同じ問題を解決できるなら、まだ高価で不安定な量子デバイスにこだわる理由はない。プロジェクト予算はAIに流れ、量子関連の仕事は減った。
そんな状況の中、湊さんは苦渋の決断をする。blueqatの社員たちに「今のうちに大手へ逃げろ」と伝えた。たとえ量子技術の先が見えなくても、大手ならAIやデータサイエンスといった他の仕事があり、彼らの生活とキャリアは守られるからだ。「冷酷に聞こえるかもしれません。しかし、これが今の私にできる最大限の誠実さでした」。
もちろん、湊さんは量子技術に“未来がない”と考えているわけではない。しかし生成AIにばかり期待と投資が集まっている今は時期が悪い。2026年は「様子見」が生存戦略になるという。
湊さんは、量子人材を目指すエンジニアに3つのアドバイスをしている。それは、1)今はAIスキルの習得を“主”とし、2)現場の知識を身につけ、3)食いっぱぐれない場所を確保すること。「今は風を読み、体力を温存し、次の確かな波が来るまで生き残ることを最優先にしてください」。
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