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「鳥取での販売がもはやリスク」──県の有害図書指定でAmazonから排除 三才ブックスが抗議のPDF公開

» 2022年08月27日 12時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 三才ブックス(東京都千代田区)は、鳥取県から一部の出版物に対し有害図書指定を受けた結果、Amazon.co.jpでの販売もできなくなったとして、県とアマゾンジャパンに経緯を聞いたとする文書を8月26日、公式サイト上で公開した。県の不透明な審査プロセスと2021年の条例改正が影響していることから「鳥取県で本を販売することがもはやリスクといえる事態」と指摘している。

「鳥取県に有害図書指定の理由を聞いてみた」(三才ブックスが公開したPDFより引用

 有害図書指定を受けたのは「アリエナイ医学事典」「アリエナイ工作事典」「裏グッズカタログ2022」の3冊。2月時点でAmazon.co.jpからアリエナイ医学事典の掲載がなくなっていることに著者が気付き、発覚した。

有害図書指定を受けた「アリエナイ医学事典」「アリエナイ工作事典」「裏グッズカタログ2022」

 三才ブックスがアマゾンジャパンに理由を聞いたところ「鳥取県によって青少年に有害な図書として指定されています。そのため、Amazonではこれらの商品の販売及び販売のための掲載を禁止しています」と回答があった。三才ブックスはこの回答がアマゾンジャパンの商品登録ルールに沿わないとして再度質問した他、禁止根拠に「アダルトメディア商品に関するガイドライン」を提示されたために18禁の商品としての再掲載も求めたが、認められなかったという。

審議会の議事録として鳥取県が提出したもの

 根本の問題である鳥取県に対し、審議会の議事録を三才ブックスが求めたところ、担当部署から送られてきたのは「令和3年度第1回鳥取県青少年問題協議会有害図書類指定審査部会(会議概要)」というPDFへのリンクURLのみ。この書類に、具体的に本のどの部分が指定に該当するかなどの発言は記載されていなかった。

 あらためて正式に開示請求をしても、送られてきたのはこの会議概要と「公文書開示決定通知書」というPDFの2通。後者の備考欄には「委員が図書類を閲覧し、全体の内容から審査を行っており、審査理由等について、委員の個別の発言は行われていない状況です」などと記載されていたという。

 一連の経緯を説明している「ラジオライフ」の小野浩章編集長は、鳥取県の指定によりAmazon.co.jpで販売できなくなった原因について、県が2021年に施行した改正条例の影響を指摘する。

 この改正条例では同県が指定した有害図書類について、県内の青少年への販売禁止をECサイト事業者に対して適用するとしている。しかし、ECサイト事業者が一部の県でのみ販売をやめるといった対応を取れるのか、妥当性や実効性の面で疑問の声が上がっていた

 小野編集長は「それが、このような形で現実の脅威となったわけです」と記している。

鳥取県青少年健全育成条例の改正概要

 「作り手側には反論の機会を一切与えられないまま、一方的に『有害』だと決めつけ販売まで規制する。これはまさしく公権力による“暴力”そのものではないでしょうか」(同)と指摘。

 有害図書指定を受けた本の表現については「露悪的な表現を取ることが多いため、(好き勝手に掲載してきたと)見られがちですが、それは読者に興味を持ってもらうための手法に過ぎません」「合法の範囲で、ドキドキするような好奇心を満たす記事とする方が、はるかに難易度が高いのです」とした。

 なお、8月27日時点でヨドバシ.comとhontoはこれらの本をアダルト商品に変更して販売を継続、楽天は特に変更せず販売を継続している。

「鳥取県に有害図書指定の理由を聞いてみた」を収録した「ラジオライフ」10月号

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