これまで“タフ仕様のApple Watch”と噂されていたモデルが「Apple Watch Ultra」として登場した。ただし発表会場で取材やタッチ&トライを通じて詳細を知ると、単なるタフモデルを超え、これまでとは別の市場に大きな影響を与えかねない製品に仕上がっていることが分かった。
Appleは地球上で最も過酷な環境に挑戦する探検家やスキューバダイバー、あるいは長距離のトレイルランを走るランナーなどアスリートのニーズをヒアリングしながら、一般的なApple Watchとは異なるモデルを作った。単なるタフモデルではないことは、実物を目にして腕に装着し、その機能を試してみれば誰でも理解できるだろう。
航空宇宙グレードのチタンを使ったケースは49mmと大きなサイズと厚みを持つにも関わらず軽量で、初めて採用した平面の風防サファイアガラスはこのチタンフレームに囲まれているため、岩などにぶつけて破損する可能性が低い。
水深100mまで耐える耐水性能、IP6X等級の防塵性能、MIL-STD 810H準拠の耐久試験をクリアしている。動作温度は−20℃から55℃と寒い山頂や灼熱の砂漠でも使える。
何よりその大きめのサイズ感に対して思いの外軽量で、新しくデザインされたバンド(目的別に3種類)の装着感が高いこともあり、普通に腕時計として好印象だった。
ディスプレイは他のApple Watchより2倍も輝度が高く(最大2000nit)、盤面も専用のデザイン。これは日中の雪山のようなまぶしい環境でも視認性を失わないようにするためだ。
雪山やダイビングといった手袋が必要な環境に合わせ、デジタルクラウンのサイズを拡大した上、刻まれる溝も深くしている。ボタンも押しやすいように高くデザインし、さらにカスタム設定した機能を簡単に呼び出せる「アクションボタン」を追加した。
バンドはマリンスポーツ向け、登山家向け、トレイルランナー向けがあり、それぞれこれまでの腕時計の歴史で培われてきたアイコニックな製品にその源流を感じる。一方、外装だけを見ても"普通のApple Watch"とはかけ離れた、独立したモデルであることが伺える。
ただし、このモデルが"Ultra"を名乗る理由は外装だけではない。組み込まれているデバイスも、さらにソフトウェア(アプリ)もアスリート向けに特別なものだ。
Apple Watchはマイクとスピーカーを内蔵しているが、Apple Watch Ultraにはより音圧が高い(=大きな音が出る)2つ目のスピーカーを追加している。例えば遭難して助けを呼ぶ際にアクションボタンを長押しすると、見通し180m先の人にまで届く特別な音(サイレン)を発することができる。さらに3つのマイクを内蔵して信号処理することで風が強いアウトドアでも明瞭な通話を可能にした。
高輝度ディスプレイでの長時間駆動を実現するためバッテリーも他のApple Watchよりはるかに大きくなった。通常モードで最大36時間動作する上、年内に予定しているアップデートで省電力設定を追加し、最大60時間のバッテリー駆動時間を確保するという。GPSや心拍数の測定回数を減らすなどして省電力化を図る「2日以上の冒険」のためのモードだ。
Apple Watch Ultraの文字盤では常時、従来よりも正確で応答性の良いコンパスの表示が行える。デジタルクラウンを回せば夜間での視認性が高い赤い表示になる。
GPSは「L1」「L5」と呼ばれる2つの周波数の電波をキャッチして精度を高める2周波GPSを採用した。ビルの影などでも位置を捕捉しやすくなる。
Apple Watchの標準アプリも、より詳細なデータを表示できたり、アクションボタンと連動してトライアスロンの種目を切り替えたり、あるいは登山中に分岐点やキャンプしている場所の登録を行ったりと、さまざまなカスタマイズが加えられている。
中でも筆者が注目したのはダイバー向けの機能だ。
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