基地局はドローンの配送地点にほど近い場所に設置されており、広域をカバーするため800MHz帯を用いた4Gでの通信を使用しているとのこと。実際に現地を訪れるとかなり山奥で、周囲に民家もないことから光ファイバーの敷設は難しいと考えられ、電波状況を確認してもau以外の電波はほぼ入っておらず、auの電波も基地局から少し離れると圏外になってしまう状況であったことから、衛星でブロードバンド通信が可能なStarlinkの存在が、今回の取り組みの実現には大きく影響したといえるだろう。
もう1つの特徴として、KDDIスマートドローンが開発したドローンの運行管理システム「スマートドローンツールズ」と、物流専用のエアロネクストがACSLと共同開発した、量産型の物流専用ドローン「AirTruck」を組み合わせている。AirTruckは独自の構造設計「4D GRAVITY」などにより荷物の揺れを抑え安定した飛行ができるのに加え、遠隔操作で荷物の切り離しができることから、今回の事例のように利発着地点に必ずしも人がいるとは限らない場合でも荷物の運行が可能になるという。
なお注文は電話で受け付ける形となり、ドローンの飛行距離は片道2.8km、飛行時間は片道約5分とのこと。実際の配送が実施されるのは毎週木曜で、荒天で飛行できない場合は翌日以降に実施する形になるとのことだ。
今回の定期飛行ルートは人が通らない谷に沿う形が取られていることから、レベル4ではなくレベル3相当での運用になるとのこと。衛星通信を用いることから遠隔操作時の遅延が気になる所だが、Starlinkでの通信遅延は4Gで十分許容できる範囲で、大きな影響はないとのことだ。
この定期飛行は土砂崩落から復旧するか、冬場の積雪などの影響がなくなるまで続けられるとのことで、提供はあくまで一時的なものとなるようだ。だが北堀氏は「秩父市のために中津川地内に残った6名のため、そして通信環境に恵まれない過疎地や域山間地域に希望与える見本にもなる、ハードルの高いミッションに取り組んでもらった」とも話しており、山間部などでのドローンによる配送を一時的な用途としてではなく、社会課題解決のためより広い地域で継続的に実現していきたい様子も示している。
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