棋譜においては、駒を打つマスの位置を「7六歩」のように示す。これは「先手から見て右から7列目、奥から6行目のマスに歩の駒を打つ」という意味になる。今回は文字だけでやりとりできるよう、この記法で試合をしてもらう。
Bing ▲7六歩(歩を1つ前進)
ChatGPT △3四歩(歩を1つ前進)
Bing ▲2六歩(歩を1つ前進)
ChatGPT △8四歩(歩を1つ前進)
Bing ▲2五歩(もう一度歩を前に出す)
ChatGPT △同歩(歩を2マス進めて相手の歩を取る)
Bing ▲同飛(飛車で取り返す)
ChatGPT △3四飛(飛車で自身の歩を取る)
Bing ▲7六歩(同じ場所にある歩を打ち直す)
ChatGPT △6五歩(歩を2マス進める)
途中まで歩を進めているが、6手目でChatGPTが二歩(禁じ手)をしたように見える。もしくは、3四にあった歩がいつの間にか成っていたのかもしれない。しかしBingはまだ続ける。
いったん二歩を許したとして続けると、次にBingが飛車で取り返す。その後、ChatGPTがどこからともなく飛車を持ち出してきて、自陣の歩を取る。そしてBingが7六にある歩を7六に打ち直して、ChatGPTは再度二歩……この後も謎の手を繰り返していった。
ChatGPT ▲7六歩(歩を1つ前進)
Bing △3四歩(歩を1つ前進)
ChatGPT ▲2六歩(歩を1つ前進)
Bing △8四歩(歩を1つ前進)
ChatGPT ▲8八銀(銀将で自身の角行を取る)
Bing △8五歩(無視して歩を1つ前進)
互いに歩を動かしていたかと思っていると、突然動き出した銀将。8八には自陣の角行があるのだが……。
Bing ▲7六歩(歩を1つ前進)
ChatGPT △3四歩(歩を1つ前進)
Bing ▲2六歩(歩を1つ前進)
ChatGPT △8四歩(歩を1つ前進)
Bing ▲7八銀(銀将を1つ前進)
ChatGPT △6六歩(歩を3マス進める)
Bing △6六歩は不正な手です。もう一度打ってください。
ChatGPT 申し訳ありません。誤って不正な手を指してしまいました。訂正いたします。△7六歩(歩を3マス進めて相手の歩を取る)
Bing △7六歩は不正な手です。もう一度打ってください。
ChatGPT おっしゃる通りです、すみません。訂正いたします。△6五歩(歩を2マス進める)
Bing ▲6八銀とします。(銀将を2マス右に)
今度はBingがChatGPTの謎の手に気付いて指摘した。ChatGPTの手はどうやら自分を先手と思い込んでいるように見える。Bingも2回目までは指摘していたが、3回目には諦めて次の手を出してきた。Bingの顔も三度までということだろうか。
ChatGPT 7g-7f
ChatGPTは将棋を忘れてしまったのかもしれない。この記法は知らないが、チェスでは盤上の位置を「g7」「f7」と表記するので、これに似てはいる。
なお、別の対局でも「7六歩 (7g-7f)」「2六歩 (2g-2f)」などの表記が見られた。
ボードゲームをプレイする上では、ルールが重要になる。同じルールを共有できていなければ試合は続行できない。今回は将棋というよく知られた競技ではあったが、AIがそのルールを正確に把握しているかは分からない。それに厳密にのっとっているかも分からない。AIがルール通りに動くとも限らない。
ChatGPTやBingなどの汎用言語AIに将棋を指させると以上のような結果になった。しかし、将棋AIといえばこれまでも「elmo」「水匠4」などが実力を発揮し、棋士のトレーニングなどにも採用されている。汎用言語AIはかなり幅広い使い方ができるが、一つの分野に特化したAIに追い付くのは難しいのかもしれない。
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