プロの将棋棋士が研究に使える、“最強の将棋AIマシン”を組むべく記者が奔走する本連載。前回は、将棋AIがプロに勝ち始めた2013年ごろの将棋ソフト「Ponanza」から、21年時点で“CPU最強”と呼ばれる「水匠」と“GPU最強”と呼ばれる「dlshogi」までの歴史や技術的な変遷を振り返った。
今回は、前回の振り返りを踏まえて「CPUもGPUも強いマシンを使ってみたい!」と自作PC専門家に相談し、実際にブツを組み上げるまでのお話。マシンスペックから知りたい人向けに、今回組み上げたPCとスペックを初めに挙げておく。
「またお仕事の相談をさせてください。プロ棋士向けの“最強マシン”を作る、的な企画のパーツ選定などで関わっていただけませんか?」
「オッケー」
「返事軽っ」
こんな二つ返事で記者の依頼を承諾してくれたのは、元アキバの店員「M氏」こと、アユート(東京都文京区)の森田健介さんだ。
記者はPC USER在籍時代に、森田さんに自作PCの組み立てを叩き込まれたことがある。自作PCの師匠といっても過言ではない人に相談できるなら願ってもないことだ。早速、相談のため都内某所へ赴くことに。
相談に赴いた場所は日本AMDのオフィス。AMDのCPU「Ryzen Threadripper」も使いたいという要望から、自然と日本AMDも交えて打ち合わせする流れになった。
記者は事前に「Ryzen Threadripper 3990Xなど最上位のCPU+大容量メモリ+最上位GPU」の環境を使いたい、使用者となる広瀬章人八段は購入も検討しているが、まずは必要なスペックの細かい調査も兼ねて試させてほしい──と要望を伝えていた。
このマシンスペックともなると、価格は一般的なデスクトップPCの範ちゅうを超える。実のところ、先例としては“高級スリッパ”ことRyzen Threadripper 3990Xで自作マシンを組んだ藤井聡太竜王の他にも、21年に渡辺明名人が130万円の研究用マシンを購入している。
タイトル戦の中でも賞金額が最も大きい竜王の獲得経験者である、広瀬八段からすれば余裕で買える額ではある(※勝手な推測)が、エイヤで買ってはみたもののこのパーツはいらなかった、思ったほど将棋の研究に適したスペックではなかったともなれば、こんな額を使わせる記者としては冷や汗ものである。
そこで、ある種のレビュー企画としてまずは一定スペックのマシンを貸してほしい、とつながるわけだ。
森田さん 話としては分かりました。ただ……。
── ただ?
森田さん Ryzen Threadripper 3990Xはもう入手が難しいんですよね。対応するマザーボードもほぼないので、3990Xでの組み立ては厳しいです。
記者が相談を持ち掛けたのは21年冬。Ryzen Threadripper 3990Xの発売は20年2月で、間もなく次世代のRyzen Threadripperが発表になるかとうわさもされる中(実際には22年3月に発表があった)、ハイエンドモデルで生産数が多くはないこと、業界を取り巻く半導体不足の事情などがあり、3990Xはすでに手に入らない状況だった。
早くも暗礁に乗り上げたか。
佐藤さん でも組めますよ。Ryzen Threadripper PROならね。
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