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100年前のフィルムが「8K+AI」で生々しく 関東大震災に迫る「NHKスペシャル」制作の裏側(1/3 ページ)

» 2023年09月02日 19時00分 公開
[ITmedia]

 2023年9月1日で関東大震災の発生から100年目を迎えた中、NHKが「NHKスペシャル 映像記録 関東大震災 帝都壊滅の三日間」を前後編で、9月2日午後10時、3日の午後9時から2連続で放送する。災害発生当時の記録映像を高精細・カラー化することで、新たに判明した撮影場所、撮影時刻に加え、生存者の証言音声、科学的知見も駆使しながら、巨大災害を追体験する内容となっている。

9月2日夜10時、3日夜9時から放送される、NHKスペシャル「映像記録 関東大震災 帝都壊滅の三日間」

 関東大震災は、東京が被害を受けた大規模自然災害として多く語り継がれてはいるが、100年前ということもあり記録映像は少なく、しかも残っているフィルムは記録映画としてツギハギの編集が施されたものが多いという。このため、撮影場所の正確な位置や時間など不明なものが多く、災害発生後の街の様子と人々がどのように行動してきたかを振り返りづらかったという。

 そこで、国内に1台しかない8K対応フィルムスキャン機で、国立映画アーカイブに保管された記録映画のフィルムをスキャン。専門家による考証のもと、AIと手作業でカラー化した。解像度が上がったことで、建物や看板などの情報、太陽の位置などから撮影場所や時刻が新たに判明した他、いわゆる白黒で荒い映像の「遠い昔の東京」ではなく、解像度と質感をもったリアリティーのある東京の姿が浮かび上がり、災害に直面した当時の人々の表情がよりくっきりと見えるようになった。

構想は10年前から

 今回のNHKスペシャル、制作者は関東大震災を伝える番組の“決定版”として制作にあたったという。番組を担当したチーフ・プロデューサーの木村春奈氏によると、「関東大震災から90年のタイミングでも番組を制作した。当時でもカラー化してお伝えしたかったが、その時点では難しかった」と明かす。

 ところが、8Kの登場やAIによる着色技術が発達してきたことで様子が変わってきた。「関東大震災から100年を迎えるにあたって何ができるかを考えていたときに、8Kがツールとして出てきた。また、カラー化の技術もこの10年でものすごく進歩し、AIのカラー化技術+人の手作業でかなりクオリティの高いカラー化ができるようになった」「構想としては10年前からあったが、(番組を)決定版にしたく高精細+カラー化することに決めたのが1年半から2年前だった」と語る。

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