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徳島の「学校タブレット大量故障」にみる、GIGAスクールの“想定外” なぜそんなに壊れるのか小寺信良のIT大作戦(1/2 ページ)

» 2023年11月10日 09時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 10月27日に朝日新聞が報じたところによれば、徳島県教育委員会が手配した約1万5000台のWindowsタブレットのうち、3500台以上が故障で使えなくなり、授業に支障が出ているという。追ってJRT四国放送の報道では、11月2日の時点でさらに増え、3782台となっている。

 この夏の暑さでバッテリーが膨張するなどしたようだが、故障率からすれば約25%にも上っており、一般的な故障率から考えても圧倒的に高い。2020年度の手配端末数は1万6500台であることから、配布数のおよそ1割、1500台程度の予備機はあったのだろう。だが「通常に戻せる目処は立っていない」と教育長が発表したところからも、予備機を投入しても焼け石に水で、事態は絶望的である事が分かる。

いったいどんなPCだったのか

 徳島県教委が手配したのは、県立の学校向けであることから、主に高校や中高一貫校であろう。小中学校はだいたい市町村立なので、PCの手配や負担は市町村が担当する。とはいえ、小中学校は国からの助成金があるため、市町村が全額を負担するわけではない。

 一方高校以上では国からの助成金はないので、自治体が全額負担するところもあれば、一部保護者負担、全額保護者負担など、さまざまなパターンがある。また国からの新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を流用することも認められているので、それを活用したところもあるだろう。徳島県の場合は、令和3年12月の時点で全額県負担で整備を完了していた。

都道府県別、公立高校の端末整備状況(令和4年度見込み)

 約8億円で1万6500台ということは、1台あたり4万8485円となる。価格からするとChromebookが妥当なところだが、Windowsタブレットが納入されているところを見ると、かなり発注に無理があったようにも思える。同様に徳島県内の市町村でも、同じ事業者に同じメーカーのタブレットを共同発注しており、この受注の紆余曲折については、幻冬舎ルネッサンス新社から書籍化されている。その一部はオンラインで読むことができる。

 製造メーカーは中国のChuwi(ツーウェイ)であるという。どこかで聞いたことがあると思って調べてみると、2023年4月に同社PC・タブレットで5GHz帯のWi-Fiの技適認証が取れていない、技適マークの表示が正しくないということで、総務省から行政指導が出されていた。

 徳島のローカル情報をネットで調べてみると、県で高校向けに手配したタブレットは「UBook」、小中学校向けに自治体が手配したのは「Hi10 X」であるようだ。総務省のサイトを調べてみると、Hi10Xは23年5月9日に、UBookは6月21日に追加認証を受けたようである。この件からも分かるように、Chuwiはこれまで日本でのビジネス経験がほとんどなかったことが伺える。

徳島で導入されたとみられるChuwi製タブレットと同型のもの

 日本ではほぼ知名度がないメーカーゆえに、故障時のサポートなども気になるところだ。保険で修理費用はカバーできるにしても、メーカー修理は大丈夫なのだろうか。高校生であれば扱いも雑ではないだろうし、修理ができなくても1割の予備機で対応できると見積もったのだろうが、甘かったようだ。

 他社でGIGAスクール用として販売されているPC・タブレットは、アメリカ国防総省が定めた品質基準、平たく言えば米軍仕様である「MIL-STD 810G/H」など、複数の安全基準にパスしているものが多い。選定の絶対条件ではないが、普通はこうした品質基準はチェックするものだろう。夏の暑さでバッテリーが膨張するPCがこうした基準をクリアしているとは思えず、おそらく選定時に安全基準のチェックが甘かったものと思われる。

 PCやタブレットはIT機器ではあるものの、今となってはコモディティ化も進んでおり、価格帯も幅広い。数十万円する高級機が1年以内に壊れたら納得いかないところだが、数万円の低価格機にそこまでの品質を期待できるのかという問題がある。むしろ不具合があればすぐ新品と交換してくれるという、中国メーカー得意の物量作戦でカバーするというのであれば、それはそれでアリと考える人もいるだろう。

 ただそれで解決できるのは扱いに慣れている人の場合で、PC初学者である学生や、トラブル対応になれていない学校に納入する端末としては厳しい。

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