AIを使えばインターネット広告の効果を“爆上げ”できるのでは?――マーケティングに携わる人なら一度は考えそうなこのアイデア。すでに取り組んで成果を出している企業がある。それがサイバーエージェントだ。
同社はインターネット広告の配信効果をAIで予測する「極予測AI」を2020年に開発した。効果が高い広告の制作を支援すべく、ChatGPTなどの生成AIを使ったキャッチコピーや商品画像の自動生成にも乗り出している。
極予測AIによってサイバーエージェントの広告制作はどう変わったのか。外部には非公開だという極予測AIのシステムの一部を、ITmedia主催のオンラインイベント「デジタル戦略EXPO」(2月25日まで)の特別講演で明かした。
運用型広告を採用したら、効果を上げるために露出するターゲットに合わせて画像や動画など多種多様なクリエイティブを用意することが一般的だ。しかし、やみくもにクリエイティブ作るのはコストの浪費でしかない。
そこでサイバーエージェントは、いま配信している効果No.1の広告を上回るクリエイティブを狙って作ろうと考えた。その制作を極予測AIで支援する。
極予測AIは、インターネット広告用のクリエイティブ制作を支援するシステムだ。極予測AIの管理画面で、インターネットやSNSで配信中の広告が、効果が高い順にランキング表示される。1位の広告に“勝てるクリエイティブ”の制作をサポートする。
デザイナーが作った新規クリエイティブを極予測AIにアップロードして「予測ボタン」を押すと、ものの数秒でAIが採点する。配信中のものより効果が高そう、効果が低そうという評価を踏まえて、画像を修正したりキャッチコピーを直したりして改めて予測。このサイクルを繰り返すことで、広告クリエイティブをブラッシュアップしていく。
作ったクリエイティブが配信中の1位を抜けるかどうかを示す独自の指標「当たり率」で比較すると、従来は約10%だった当たり率が、極予測AIを使うと20%を超えるようになったという。
「いままで広告の制作は、デザイナーが作った後にクリエイティブディレクターがチェックして修正を重ねていました。極予測AIはデザイナーが作ったら瞬時に評価が返ってくるので精度を上げられます」――こう話すのは、サイバーエージェントの毛利真崇さん(AI事業本部 AIクリエイティブDiv. 統括)だ。
サイバーエージェントの極予測AIは、複数のAIの特徴を生かして効果的なITシステムを作り上げることに成功した好例だ。
広告クリエイティブの効果予測では、1つのクリエイティブを解析するために文字認識用のAI-OCRや画像処理AI、動画の音を分析するAI、ナレーションの文字起こしなど「本当にいろいろなAIを組み合わせて成り立っている」と毛利さんは明かす。
23年5月には、極予測AIにChatGPTや独自開発した大規模言語モデル(LLM)を組み込むことでキャッチコピーの自動生成が可能になった。24年から商品画像の生成もできるように進化している。
さらにサイバーエージェントは、架空の人物モデルをAIで生成して広告に使う「極予測AI人間」を開発した。AI人物モデルを使うとクリック率(CTR)が122%向上したという。果たしてどのようなシステムなのか――この続きはぜひオンラインイベントのアーカイブ配信をチェックしてほしい。
サイバーエージェント × 深津貴之氏が語る生成AIの活用方法
企業は生成AIをどう活用すればいいのか――深津貴之氏と、独自LLMを開発したサイバーエージェントの毛利真崇氏が対談したイベント「ITmedia デジタル戦略EXPO」をこちらから無料でご視聴いただけます。
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