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若年富裕層ターゲットに百貨店外商「若返り」戦略 アプリ増強、新入社員配属

» 2024年05月02日 10時34分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 若年富裕層の外商顧客の利便性向上に応えようと、各百貨店が力を入れている。各店では、数十年ぶりに新入社員を外商部門に配属させるなど取り組みを強化。近鉄百貨店では、2021年から4年連続で新入社員を配属しているほか、外商顧客向けに情報を発信するアプリの登録者数を27年までに倍となる約10万人に増やす方針を明らかにした。担当者は「従来の年齢層だけでなく、若い世代など幅広い顧客の満足度を高めたい」と話す。

 「お客さんからの何気ない質問にも答えられることが大事です」。2月上旬、大阪市内のホテルで開かれた外商顧客向けの催事。宝飾品や衣服、調度品などが並ぶフロアで近鉄百貨店の若手外商員、吉岡沙希外商第二係長(29)はにこやかに話した。

photo 近鉄百貨店で若手女性外商員として活躍する吉岡沙希さん(中央)=大阪市天王寺区

 吉岡さんは17年入社で、同社では珍しい20代の女性外商員だ。これまでは40〜50代男性のベテラン外商員が多かった同社だが、吉岡さんは外商部門が約10年ぶりに迎えた女性新入社員だった。現在約230人の外商員のうち、女性は約5人。吉岡さんによると、「30代など若い世代も担当している。また、口座の名義人に女性が増えている印象だ」と話す。

 同社では外商員の若返りに力を入れており、21年からは4年連続で新人外商員が誕生。今年は新入社員の約2割が外商員に配属された。今後、別の部署に異動となる可能性もあるが、担当者は「若手の知見を取り入れるためにも配属先として重視している」と話す。

 また、幅広い世代の外商顧客の利便性を向上させようと22年9月、百貨店の情報を提供するアプリに外商顧客専門ページを創設。顧客向けの催事などの情報を告知しており、現在、登録者は約4万5000人。27年までに倍となる約10万人の登録者を目指しており、デジタルを活用した外商戦略を強化する。

 高額品の売り上げを牽引(けんいん)している外商顧客。起業で成功した若手経営者など40代以下の富裕層による売り上げが目立つ中、各店は取り組みを強化する。若年富裕層の新規開拓に力を入れる大丸心斎橋店(大阪市中央区)では30年ぶりとなった20年以降、5年連続で新入社員を外商員として配属。担当者は「顧客の心をつかむようなコミュニケーションを取れる人材、新しい買い方やニーズに対応できる人材が必要だ」と話す。

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 そごう・西武は5年前に外商に新入社員を約20年ぶりに配属し、令和23年度は新入社員の半数以上を外商部門に所属させた。高島屋大阪店(同区)でも20〜30代の若手外商員を増やしている。また、大丸松坂屋百貨店はプレミアム会員制サイトで特選ブランドや時計・宝飾品の入荷案内などの情報発信を実施。外商カードのオンライン入会も21年11月から開始しており、利用者が増えている。同社は「若年富裕層の購買は活発で購買金額は大きく伸びている」としている。(清水更沙)

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