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自民、能動的サイバー防御の議論本格化 早期導入目指すも公明とは温度差

» 2024年05月17日 17時15分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 自民党は5月17日、サイバー攻撃に先手を打ち被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に向けた合同会議を党本部で開き、議論を本格化させた。近く有識者会議を立ち上げる政府の動きに合わせ、法整備の課題を整理し、提言を取りまとめる見通しだ。公明党は「これから方針を検討する」としており、早期の導入に向けては与党間で温度差がある。

photo 能動的サイバー防御の導入に向けた自民党の会合で挨拶する甘利明・党経済安全保障推進本部長=17日、東京・永田町

 「国際標準を備えるために乗り越えなければならない壁がある。国民を守る体制をしっかり築く」。党経済安全保障推進本部の甘利明本部長は、合同会議で早期の法整備に意欲を示した。

 能動的サイバー防御は、2022年策定の国家安全保障戦略で、サイバー対応力を欧米と同等以上に高めるため導入方針が示された。攻撃情報を検知するための監視や相手側サーバーに侵入して無害化する対応を想定しており、憲法21条が規定する「通信の秘密」や不正アクセス禁止法との整合性が課題になる。

 合同会議では政府側から法的課題や各国の導入状況を聞き取った。会議後、甘利氏は「G7(先進7カ国)で国際標準を備えていないのは日本だけだ。国民の不安を払拭しながら迅速に進めていく」と強調した。

 一方、公明の石井啓一幹事長は同日の記者会見で、能動的サイバー防御について「重要性は理解している」としつつ「党の方針はこれから検討していく」と述べるにとどめた。導入を急ぐ自民に対し、党内議論は進んでいない。

 自公両党は国家安保戦略の策定に向けた協議で、能動的サイバー防御を導入する必要性で一致したが、具体策の検討は積み残した。政府・自民は当初、23年秋に有識者会議を設置し、与党協議も並行して進める段取りを描いていたが、防衛装備移転に関する与党協議を優先させ、対応が遅れていた。

 装備移転を巡っては、国際共同開発品の輸出ルールなどについて自公間の隔たりが浮き彫りになり、協議が長引いた。自民関係者は「装備移転協議の二の舞は避けたい」と漏らす。(小沢慶太)

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