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AI法規制導入へ政府が「戦略会議」で議論開始 規制強める欧米と歩調合わせる

» 2024年05月23日 10時15分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 政府は5月22日、AIの開発や利用に関するルール作りなどを議論する「AI戦略会議」を開き、自動で文章などを作成する生成AIの安全性確保のための法規制導入へ向けた議論を始めた。これまでは事業者らへガイドラインを示すにとどめていたが、AIへの規制を強める欧米に歩調を合わせる。主に大規模なAI開発事業者を対象に、法規制の導入要否や具体的な内容を検討する方針だ。

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 会議では議論のたたき台が示された。AIには人権侵害などのリスクがあり「イノベーション(技術革新)促進のためにも適切なガードレールが必要」と定義。規制を強化する各国の動向も踏まえ、大規模なモデルなどリスクの大きいAIを開発する事業者を主な対象に、情報の開示を求める制度などの導入を検討すべきと問題提起した。

 AIの利用や開発について、日本政府はこれまで「広島AIプロセス」で国際的なルール作りを主導してきたほか、4月には企業向けのAIガイドラインを公表するなどしてきたが、いずれも法的拘束力のない指針という形にとどまっていた。「過度な規制はイノベーションを妨げる恐れがある」(政府関係者)との考えがあったためだ。

 一方欧米などでは、AIの進化に伴い偽情報の拡散や人権侵害といった問題が深刻化したことで、規制を強化する流れが強い。欧州連合(EU)では21日、リスクの大きさに応じて規制の内容を変更し、違反には巨額の制裁金を科す「AI法」が成立。米国でも、一部のAI開発企業に安全性の報告を義務付けるなどする大統領令が発令された。中国でも、国家の脅威となるような生成AIの利用や提供が禁じられている。

 こうした流れを受け、日本政府は法規制の導入を排除せず、安全性とイノベーションを両立させるための議論が必要と判断した。今後の具体的な検討方法などは6月に策定する政府の経済財政運営の指針「骨太の方針」に反映させる考えだ。(根本和哉)

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