堺市の建設会社、進和建設工業は生成AIを使ったデジタルクローンで日本初の事業承継に挑むと発表した。6月21日、現社長が退いて会長に就任し、副社長が新社長に昇格するが、あわせて現社長のデータを学習させたAIクローンを試験導入する。
顔や声、方言まで社長そっくりのクローンで、すでに開発を進めており、今は一問一答に応じられるレベル。2026年3月をめどに、事業計画立案などもこなせるまでに”成長”させる。後継者難や人手不足が深刻化している建設業界において、課題の打開策となるか注目される。
クローンはAIベンチャーのオルツ(東京都港区)が開発した。同社は12年までに国内の労働人口5000万人分をAIクローンで補う目標も掲げている。
24年4月から、マンションの設計・施工などを手がける進和建設工業の西田芳明社長(72)の著書やブログ、講演録などを取り込みクローンに学習させてきた。
クローンに経営哲学を問うと、「社員が自らの力で問題を解決し成長していくことが、会社全体の成長につながるんや」と答えが返ってくる。
さらに学習を進めればクローン自ら質問や感情表現、英語や中国語での会話も可能になるという。今後は図面を基に見積もりを出すなど専門性の高い技術の習得も目指す。
西田社長は21日、約37年間務めた社長を退き、会長として仕事の一部をクローンに担わせる。新社長には長男の西田泰久副社長(46)が就く。
西田社長は「私が死んだ後も(知見を)次代に残せるようにしたい」と語る。
ただ、技術やノウハウだけなく「一番伝えたいのは経営に対する思い」という。判断を迫られたとき、創業の原点に立ち返ることが重要で、時代が移っても変えない「不易」(ふえき)の橋渡し役をクローンが担うことを期待する。
社長の座を受け継ぐ泰久氏も「頼り切らないことが重要。AIが人類の英知を超えるのは避けられないが、恐れず使いこなせる人間になることが必要だ」と話している。(田村慶子)
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