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経理は「集計屋」じゃない 合理的な経営判断を促す“懐刀”になるにはいつもとは違う数字を作ってみようじゃないか

» 2024年07月13日 09時00分 公開
[西田めぐみITmedia]

 2024年7月9日、ITmedia主催のオンラインイベント「デジタル戦略EXPO 2024 夏」が開幕した。本イベントは、“今”知りたいデジタル戦略の最前線を探求することで経営層をはじめビジネスパーソンの変革に広く寄与することを目的とし、20日間にわたって有識者の基調講演やベンダーセッションを届けるものだ。

 本記事では、7月16日の「財務戦略」カテゴリーに登壇する中田清穂氏(公認会計士、一般社団法人日本CFO協会主任研究委員)の講演内容を一足先に少し紹介したい。

制度会計は「企業の実態を反映していない」 なぜか

 中田氏は、経理の主業務の一つに「制度会計」を挙げる。会計基準などに即した会計処理や決算処理が該当するが、同氏は「これは主に外部報告のための作業であり、企業の実態を反映していないものが多い」と指摘する。

 減価償却資産の耐用年数で考えてみる。製造業の企業が利用する金型の場合、「実際には15〜20年使っている場合でも、ルール(法定耐用年数)により2年で償却する」(中田氏)など実態の使用年数とは乖離(かいり)した計算で製造原価が決まっていることが多い。

 また開発費の会計も同様だ。5年間の開発期間を経て、量産に入れることになったと仮定する。5年間で試作品などにかかった費用はその全てを資産計上できないため、毎年のコストとして処理をする。量産したときの製造原価には開発でかかった費用は含まれないため、「社長は『開発してよかった。もうけたな』と思っていても、実は開発中に何億円ものコストがかかっていたということもある。これらは制度会計上では説明できない」(中田氏)

「なぜあんな大企業が」 いきなり巨額の減損が出るワケ

 日本の会計基準では、2期連続で赤字が発覚しなければ減損だということを認知されにくい。中田氏は「監査法人から『減損ですよ』と言われて経理が驚き、経営層に報告するのがよくある流れ。経営層が会計に明るければその限りではないが、残念ながらそうではない企業が多い。経営者は直前まで、減損会計をしないといけないことに気付かない。これは大変な問題だ」と警鐘を鳴らす。

photo 講演する中田氏

 中田氏が強調するのは「制度会計に引きずられると経営アクションが遅れる。事業撤退の判断が遅れて大きな損失につながってしまう」ということだ。実際に、大企業が突然巨額の減損を出し、世間を騒がせる事態になることは多い。

 「経理がルールに従い、決算処理をするのは当然だ。ただ『制度会計情報をそのまま経営情報に使っていいのか』については、一度考えてみてほしい。制度会計は過去の情報でしかない。経営者が必要としている“未来予測”情報を提供できている経理は少ない」――中田氏はこう話し、次の3つを推奨する。まずは制度会計が経営判断をゆがめることもあると理解する。その上で実態に合った会計情報を検討する。そして予測情報の作成と、その精度の向上を図る。

 では、経理はこういった前提に立った上でどのように“集計屋”から脱却すればいいのか? 詳細はデジタル戦略EXPO 2024 夏で確認してほしい。デジタル戦略EXPO 2024は登録無料で視聴できる。会期は7月28日まで。「新規登録&来場キャンペーン」も実施しているので、ぜひ会場で「経理発信の財務戦略」をチェックしてみてはいかがだろうか。

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