デジタル庁は、事業者がスマートフォンで運用する「マイナンバーカード対面確認アプリ」を、8月末をめどに提供する。スマートフォンやSIM購入時、銀行口座開設時などの本人確認に利用することを想定しているが、アプリ自体は一般公開され、誰でもダウンロードして利用できる。現在実施中の実証実験の様子を、河野太郎デジタル大臣が8月1日に視察した。
2024年4月に八尾市市議が遭遇した、偽造されたマイナンバーカードを使ったSIMスワップによる詐欺被害をご存じだろうか。
いまや、多くの決済情報がスマートフォンに集約されている。今使っている端末のSIMカードが乗っ取られると、あらゆる権限を奪われかねない。この事件では券面を偽造されたマイナンバーカードで市議のスマホと同じ電話番号のSIMが再発行された。犯人は、そのSIMを利用して市議のスマホを乗っ取り、約225万円の高級腕時計を購入するなど約240万円を使い込んだ。
これは、市議の住所、電話番号、生年月日などが公開情報であったために、マイナンバーカードの券面が偽造されたというもの。
マイナンバーカードは、NFCに対応したICチップの情報と暗証番号を用いて本人確認することが可能だが、利用時のセキュリティの重要さに応じて、さまざまな認証方式を取ることができるようになっている。携帯電話の契約などは券面情報の目視でも契約できたのだが、券面自体の偽造は画像処理ソフトを使えばさほど難しくない。その点を突いた詐欺だといえる。しかし、より高いセキュリティが必要な場所で使われる、ICチップを読み取るための機材を導入するとなると、それなりにコストがかかる。
そこで、スマートフォンを使って事業者がICチップを読み取り、マイナンバーカードが本物であることを確認できるアプリを、民間専門人材の協力を得てデジタル庁が開発。8月下旬をめどに一般公開する方向で決まった。
今回、河野太郎デジタル大臣が、民間事業者の業務窓口における本人確認実証の視察を東京都渋谷区にある三井住友銀行の新業態店舗である「Olive LOUNGE渋谷店」で行った。その様子をお伝えしよう。
実証実験は、同店で7月29日から8月1日にかけて実施。来店した顧客が口座開設するなど本人確認が必要な場合に、顧客の承諾を得て行われている。
Olive LOUNGEでの本人確認の流れはこうだ。まず、店舗担当が「本人確認のために、マイナンバーカードを確認させていただきます」と伝え、顧客のカードを預かり、スマートフォンのカメラにかざす(河野大臣の体験時は、iPhone SE3が使われていた)。
券面情報をカメラから獲得すると(画像を撮影するわけではなく、後述の照合番号だけが取得される)、「スキャンの準備ができました」というメッセージが出る。そこで、スマホの上部(NFCアンテナが内蔵されている場所)にマイナンバーカードをかざす。
瞬時に「読み取りが完了しました」というメッセージが表示され、顔写真と氏名、住所、生年月日、性別(『4情報』と呼ばれる)が、スマホに表示される。
店舗担当が、窓口にいる本人の顔と、マイナンバーカード、スマートフォンに表示されたデータを見比べて、本人かどうかを確認して終了する。
河野大臣は「私のカードで試すのは、ぶっつけ本番だったので若干不安だったんですけど(笑)、カードの券面の読み取りも、チップの読み取りも速いですし、きれいに画像も出てきたので、ちょっとすごいなと思いました。デジ庁のチームがかなり頑張ってくれてましたので、この調子で今月中には使っていただけるようになると思っています」とコメントした。
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