「りそな銀行」「イオンカード」「JR西日本」「ゆうちょ銀行」「三井住友カード」──実在する組織を騙(かた)って、偽サイトに誘導し、金融情報や個人情報を詐取するフィッシングの被害が後を絶たない。カードの不正利用による被害額は年間540億円以上。滋賀県内でも消費生活センターへの相談が年々増加している。私たちのスマホにも毎日のように詐欺メールが届き、人ごとではない。消費生活センターは、「おかしいな、困ったなと思ったら、すぐに相談してほしい」と呼びかけている。
2023年、滋賀県内の70代の女性のスマホにクレジットカードの再登録を求めるメールが突然届いた。女性は信じて、「こちらへ」とある文字を軽くたたき(タップし)、指示に従ってカード番号などの個人情報を入力した。後日、盗まれた情報でカードを不正利用され、約10万円の被害に遭った。
滋賀県消費生活センター(彦根市元町)や市町の消費生活センター、相談窓口にはフィッシングの相談が相次いでおり、被害事例には事欠かない。
50代の男性も本物のサイトと勘違いして、届いたメールの指示に従い個人情報とカード情報を入力。その後、約15万円をクレジットカードで不正利用された。
「解約予告のお知らせ」。昨年、40代の女性にクレジットカード会社を騙るメールが届いた。女性はURLをタップし、クレジットカード番号などの個人情報を入力した。入力後、女性がカード会社に確認。フィッシングとわかり、カードの利用停止措置と再発行を実施し、被害を免れた。
フィッシングの攻撃対象となり得る事業者106社などで組織する「フィッシング対策協議会」(事務局・東京都中央区)によると、2023年のフィッシング報告件数は、119万6390件(前年比で23.5%増加)と過去最多だった。クレジットカード事業者などを装ったものが多くを占めたという。
クレジット業界の総合団体「日本クレジット協会」(東京都中央区)によると、23年のクレジットカード不正利用被害額は、過去最高の540.9億円。さらに細かく見ると、直近の24年1月〜同3月のクレジットカード不正利用被害額は、前年同期と比べてほぼ横ばいで、121億円だった。
滋賀県内でもフィッシングによる被害が増加しているとみられる。
県消費生活センターによると、フィッシングに関連し、同センターや市町の消費生活センター、相談窓口への情報提供を含む相談件数は、21年度(208件)以降、22年度(240件)、23年度(259件)と増え続けている。
「クレジットカードなどを不正利用され、払ってしまったものを取り戻すのは難しい」
滋賀県消費生活センターの北川愛子主事は指摘する。では、フィッシングにどう対抗すればいいのか。
同センターは、(1)日頃利用している事業者などからのメールでもまず、フィッシングを疑う、(2)文中のURLをタップしない、(3)クレジットカードの利用履歴をこまめに確認す──などとアドバイスする。県警サイバー犯罪対策課は、ほかに、携帯電話会社などの迷惑メッセージブロック機能の活用も促す。
一方、フィッシング対策協議会も迷惑メールフィルターの利用を勧める。また、フィッシングメールや迷惑メールが大量に届く場合は、アドレスが広くインターネット上に漏洩(ろうえい)していることを意味するため、アドレスを新しく作ることも有効としている。
北川主事は、「とにかく、何かおかしいな、ちょっと困ったなと思ったら、遠慮せずに相談してほしい」と話していた。(野瀬吉信)
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