任天堂とポケモン社は9月18日、ポケットペアが開発・販売するゲーム「Palworld/パルワールド」が複数の特許権を侵害しているとして、特許権侵害訴訟を提起した。ネット上でも多くのユーザーがこの話題に反応し、さまざまな意見が飛び交っている。その中には「特許権侵害って一体なに?」などの声も見られる。
パルワールドは、1月19日にSteam(PC)向けに発売したモンスター育成オープンワールドゲーム。不思議な生物「パル」が暮らす世界を舞台にしたゲームで、1カ月で総プレイヤー数が2500万人を超えるなど人気を集めた。一方、一部のパルの容姿がポケモンのデザインと酷似しているという意見もあり「著作権の問題はないのか?」などと指摘する声もあった。
案の定、任天堂とポケモン社がパルワールドに訴訟提起する展開となったが、今回問題となったのは同ゲームを巡る“特許権”だ。では一体、著作権侵害と特許権侵害は何が違うのか? その違いについて、シティライツ法律事務所(東京都渋谷区)の前野孝太朗弁護士に解説してもらう。以下の段落から前野弁護士の文章。
まず、著作権侵害についてです。著作権法は著作物を保護しています。著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます(第2条第1項第1号)。
ポイントは「創作的」な「表現」という部分で、表現ではないアイデアや事実は保護されず、表現でもありふれた表現は保護されません。
ゲームでは、ゲームのイラストや3Dモデル、ゲーム画面、音楽、テキスト、映像、プログラムなどさまざまなものが著作物として保護されます。
また著作権者は、著作物を複製や翻案などする権利を専有しています。これらの権利の束を「著作権」といいます。そのため、誰かが著作権者の許諾なく、複製や翻案などを行いますと、著作権侵害(厳密には、複製権侵害や翻案権侵害)が生じます。
ただし、著作権法は、創作的な表現を保護しますので、著作物と対象の作品との共通点が、創作性のある部分といえなければ、侵害とはなりません。極端な例ですが、共通点が100個あろうとも、創作性のある部分でなければ侵害とはならないため、皆さまの「似ている」という感覚と法的な判断がズレやすいところでもあります。
著作権侵害が生じた場合、該当部分を含むゲームの販売の差止めや、損害賠償請求などが可能となります。
次に、特許権侵害です。表現を保護する著作権法に対して、特許法は、アイデアを保護する法律です。特許法は、条件を満たしたアイデア(発明)を「特許」として、発明者に一定期間の独占権を与える代わりに、発明をオープンにさせて技術の進歩を促進しています。
特許を受けることができる発明の条件はいくつかあり、例えば、新しいものであること(新規性)や、容易に思い付くものでないこと(進歩性)などが条件とされています。
ゲームに関しては、さまざまな特許が出願されており、ゲーマーであれば、「ファイナルファンタジー」シリーズのゲームシステム「アクティブタイムバトル」についての特許や、音楽ゲーム「beatmania」に関する特許があったという話は聞いたことがあるかもしれません。
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