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画像生成AI活用で賛否、ゲーム「神魔狩りのツクヨミ」は“成功”したのか──金子一馬氏&開発Pに手応えを聞いた(2/3 ページ)

» 2025年06月29日 12時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

「最初はビクビクしていたが──」リリースから2カ月弱、ゲームのいま

──リリースから2カ月弱がたちましたが、現在の率直な気持ちを教えてください

金子さん(以下敬称略):実は、(開発を始めた)最初の方はAIの利用に反対する世間の動きもあり、結構ビクビクしていました。ただ、出来上がったころにはAIが一般的になっており、リリース後はすんなり受け入れられたと思っています。(イラストのオリジナルを作る)私が、コロプラの社員としてOKを出しているというのもあるかと思いますが。

photo 金子一馬さん

齋藤さん(以下敬称略):自分も同じような受け止め方です。リリース前は「AIを使った」という話題だけが盛り上がってしまい、ゲームそのものに目を向けてもらえない事態を恐れていたのですが、あくまでAIを道具として使ったゲームとして受け入れてもらっており、安心しました。

 プレイヤーからすると、AIを使っているかどうかは(面白さとは)関係なく、それで面白くなるのか、AIを使った意義があるのかが大事です。一方で、そこをクリアすればプレイヤーに納得してもらえることも分かりました。そこが一番の収穫ですね。

──金子さんにお伺いします。自分の創作物を模したものが、AIにどんどん作られているという状況は、素人目には不思議にも思えるのですが、どのような心境で受け止めているのでしょうか

金子:(AIカネコは)もう別人格って感覚ですね。自分のデータを入れたものではあるけど、俯瞰(ふかん)して見ているというか。純粋に楽しんでいます。

──ゲームは事前に何かしら定量的・定性的な目標を定めてリリースしたと思いますが、現時点での達成状況はいかがでしょうか

齋藤:(神魔狩りのツクヨミを)コロプラとして今後AIを使ったゲームを作っていくべきかのベンチマークとしても見ていることもあり、第一目標として定めていた「AIを使ったゲームが世に受け入れられるか」はクリアしたかなと考えています。プレイヤー数や売上については、達成しているところもあればそうでないところもあるのですが。

活用したモデルや手法は? ゲーム開発の裏側

──改めて、神魔狩りのツクヨミがどのような背景で生まれたか、どのように画像生成AIを活用しているかお聞かせください

齋藤:神魔狩りのツクヨミは金子さんが独自に考えていたゲームのコンセプトと、それとは別に動いていた、生成AIを使ったゲームの企画が合体する形で生まれました。AIカネコといったアイデアは最初からあったわけではなく、企画の途中で「金子さん風のカードイラストを(生成AIで)作るのがいいね」という話になり、今の形になっていった次第です。

 AIカネコは、画像生成AIモデル「Stable Diffusion XL」をファインチューニングする形で開発しています。まず、金子さんがコロプラで描いたイラスト数十点を学習させたモデルにイラストを生成させ、それを選定してさらにデータセットに加え──という流れを過学習にならない程度に繰り返しました。

──意図しない画像が出ないようにする対策はどのように

齋藤:意図に沿わない画像が出てきた場合どうリカバリーするかは、学習段階からユーザーに届ける段階まで、事前にフローを考えて設計しました。

photo 齋藤ケビン雄輔さん

 基本的にはデータセットの影響が大きいので、データ側の整備やタグ付けなどで対応しました。とはいえ完全に防ぐのは難しいので、生成した画像を後からチェックし、(意図に沿わないものをプレイヤーに見せないよう)はじく仕組みも設けました。それでも出てきてしまう場合は、プレイヤーからの問い合わせを受け付けて対応しています。

──コロプラではGitHub Copilotなどをすでに導入していますが、他に生成AIの活用は

齋藤:画像生成AIはAIカネコだけでなく、(ゲーム内の)デザインの案出しにも使いました。Stable Diffusion以外の画像生成AIも使いましたね。実際には採用しませんでしたが、サウンドエフェクトやBGMに音楽生成AIを使えないか検証もしました。

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