新たなメディアが登場する度に選挙戦は様変わりしてきた。昨年の兵庫県知事選ではSNSの影響力が可視化され、参院選でも各党が活用を模索する。とりわけ国民民主党の玉木雄一郎代表とれいわ新選組の山本太郎代表、参政党の神谷宗幣代表は政界屈指のSNSの使い手で、自らインフルエンサーとなり、サイバー空間での対決を繰り広げる。
「先ほど福岡に着きました〜」
7月4日午前11時前、玉木氏のXのアカウントで突然、ライブ中継が始まった。福岡市内での街頭演説に向かう車上の玉木氏が「手取りを増やす、投資を増やす、教育予算を増やすの『新三本の矢』で日本の経済を飛躍的に成長させる」と訴えた。
玉木氏は「永田町のユーチューバー」を自称し、SNSを駆使する政治家の先駆者だ。Xのフォロワー数は約73万、7年前に開設した個人のYouTubeの登録者数は約57万人に上る。玉木氏は「昼間はみんな仕事をしており、街頭演説に来られるのは数百人が限度だが、Xなら7000、8000人が見てくれる」と話す。
SNSは政党の規模や資金力よりも党首のキャラクターや企画力などで勝負でき、小さな政党でも一気に知名度を上げられる。れいわも6年前の結党当初からSNSを重視してきた。
「何かしらコメントを添えてほしい。マイナスの意見でも歓迎だ」
山本氏は4日正午過ぎ、東京都足立区のJR北千住駅前で演説に立ち、自身と候補者とのスリーショット写真の撮影とSNSでの拡散を呼びかけた。あえて党に批判的なコメントも歓迎するのは、閲覧数が増えれば党の認知が広がるためだ。産経新聞の取材に「アンチを含め、うちの素材を『何を勝手に使っているの?』とは言わない。それを含めて民主主義」と力説した。
新興勢力として注目される参政の街頭演説にはYouTuberが集う。自身でチャンネルを運営する50代男性は3日、銀座から新宿にハシゴし、神谷氏の演説を生配信していた。
男性は参政のみを追いかけているといい、配信を始めた理由について「神谷氏の演説をたまたまYouTubeで見て、時代に乗っていると感じた。主義・主張も好きだし、カリスマ性もある」と語った。選挙期間中は「閲覧数が増える」とも話し、神谷氏について全国各地を飛び回るという。
SNSに詳しい国際大の山口真一准教授は「3党に共通することは、いずれもトップの発信が強いことだ。玉木さんは1つの動画で1つの政策を訴え、戦略的に動画を活用している。山本さんは劇場型で、とにかくファンを盛り上げることにたけている。神谷さんも力強いメッセージで支持者の関心を集めている」と分析する。
もっともSNSは諸刃の刃でもある。神谷氏は3日の演説で「高齢の女性は子供を産めない」と発言した部分が切り取られ、賛否両論を巻き起こしている。ネット上で話題になる「バズる」と炎上は紙一重で、インフルエンサー党首は発信に知恵を絞り続ける。(永原慎吾)
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