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参院選のYouTube動画、9割超は第三者配信 多くが切り抜き 2024年衆院選の2倍ペース

» 2025年07月15日 12時35分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 動画投稿サイト「YouTube」で公開されている参院選(7月20日投開票)の関連動画のうち、9割超が政党や候補者以外の第三者の配信だったことが、選挙情報サイト「選挙ドットコム」の調査で分かった。再生回数は公示日から6日間で約2億5000万回に上り、昨年の衆院選時の約2倍のペースで閲覧されていた。第三者発信の多くが、演説などを編集して流す「切り抜き動画」で、刺激の強い言葉を集めて再生回数を稼ぐ傾向もあり、選挙結果への影響も指摘される。

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公示から6日で2億5000万回超

「選挙関連の動画がYouTubeやX、TikTokなどを通して広く拡散され、選挙結果に対する影響力は無視できないほど大きくなっている」

 選挙ドットコムの鈴木邦和編集長は、インターネットと選挙を巡る現状をこう解説する。

 同社によると、YouTube上の参院選関連の動画の再生回数は、公示日の7月3日から8日までの6日間で計約2億5000万回となり、前回の衆院選期間(昨年10月15日公示〜27日投開票)の全13日間の計約2億7500万回に迫っていたという。

 再生数が急伸した背景にあるのが、動画を使ったPRに対する各政党の認識の変化だという。鈴木氏は「昨年の東京都知事選や兵庫県知事選で、SNSを駆使した候補が注目を集め、結果にも重大な影響を与えたことが大きい」と指摘する。YouTubeを中心に各政党が動画配信を大幅に増やしている。

 政党や候補だけでなく、支持者や一般の有権者も動画配信を加速させている。同社の分析によると、今回再生された約2億5000万回のうち、政党・候補者が配信した動画が全体の約9%。残る約91%は第三者が発信源だった。政党や候補、大手メディアなどが流す動画の一部を切り抜いたり、街頭演説などを自ら撮影し、編集したりした動画が多い。

 第三者が積極的に配信する理由について、鈴木氏は「単純に政党や候補の支持を広めたいという思いだけでなく、配信収入が得られる仕組みも影響している」と分析する。

ネット参考に投票4割

 動画配信の重要性を示す別の調査結果もある。

 昨年の衆院選の際に行った同社の世論調査では、投票の時に参考にするメディアを尋ねたところ、若い世代ほど情報をインターネットから得ていることが分かった。

 70代以上でもっとも多かったのが「新聞」で36%。「テレビ」34%、「インターネット」が12%と続いた。一方、「インターネット」の比率は年代が若くなるほど高まり、40代以下では全ての年代で「インターネット」が最も多くなった。20代では半数を超えた。

 全年代の平均を見ても、4割程度がインターネットを一番の参考にしていた。高齢世代でもインターネットへのシフトが進んでおり、鈴木氏は「ネットから選挙情報を得る傾向は今後さらに加速する」と語る。

XとYouTubeが2トップ

 有権者が参考にしたインターネットメディアの運営基盤を分析すると、SNSや動画サイトなど「グローバルプラットフォーム」と呼ばれる分野からの情報が、報道各社などのネットニュースに迫る割合で重用されている実態も浮き上がる。同社が昨年の衆院選の際に行った世論調査では、ネットニュースを参考にした人は全体の6割に上ったが、グローバルプラットフォームも4割を占めた。

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 グローバルプラットフォームの内訳をみると、Xが18.8%、YouTubeが18.0%とツートップだった。鈴木氏は「現在はショート動画が多いTikTokが比率を伸ばしている」とも指摘する。アクセスが集まる媒体は刻々と変化しているという。

 鈴木氏は、今後は各政党がプラットフォームの特性をよく理解した上で、戦略的に動画を活用していくことが求められると強調する。「選挙に投入する資金のうち、ネットにどれくらいリソースを割けるかが選挙の明暗を分けるだろう」とも予測する。(外崎晃彦)

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