企業にとっても、この法改正は大きな転機になる。象徴的なのが、ビットコインを財務戦略の柱に据える企業だ。例えばメタプラネット(東証スタンダード)は、企業資産の大半をビットコインで保有する戦略を採っているが、株価は乱高下し、この戦略に対する市場の評価は厳しかった。
理由は単純だ。暗号資産は価格の変動が激しく、会計処理のルールも曖昧。東証や機関投資家から見れば「よく分からない投機的な資産を大量に持つ会社」に映る。いくら経営陣が戦略を説明しても、理解を得るのは難しかった。
だが法改正で風向きが変わる。暗号資産が株式と同じ金融商品になれば、企業が保有する理由も正当化しやすくなる。情報開示のルールが整い、会計基準も明確になれば、評価する側も判断のしようがある。「投機」ではなく「財務戦略」として認められる道が開ける。
ただし、東証の姿勢は厳しい。報道によれば、日本取引所グループ(JPX)は「暗号資産トレジャリー」を中核事業とする企業の拡大を抑制する方法を検討している。本業で経営難に陥った企業が、安易にビットコイン財務企業へ転換することへの警戒だ。金融庁が資産を「合法化」する一方で、東証は事業モデルを「抑制」しようとする、矛盾した構図が生まれている。
この報道を受けて、17日にメタプラネットの株価は一時9%急落した。SNS上では「メタプラネット急落。企業投資モデルに逆風、国内産業海外流出加速」との懸念が広がる。メタプラネット側は「投資家保護やガバナンス強化を目的とした規制の議論は必然的かつ健全な動き」と規制を歓迎する姿勢を示しているが、その真意は「健全な規制」を歓迎することで、自らが「不健全な」規制対象ではないことをアピールし、模倣企業の参入を防ぐ「参入障壁」として利用する戦略だとの見方もある。
金融商品としての地位が固まれば、ビットコインなどを財務戦略に組み込む企業は増える可能性もある。財務を多様化したい大手企業にとっても、この改正は選択肢を広げる。暗号資産関連のスタートアップにとっては、上場という出口戦略が現実味を帯びてくる。人材も資金も集まりやすくなり、日本の暗号資産市場は厚みを増していくはずだ。
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