2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
スウェーデンのウプサラ大学に所属する研究者らがEuropean Journal of Epidemiology誌に発表した論文「Night shift work, dietary patterns, and coronary heart disease」は、食物繊維の摂取量が多い夜勤従事者ほど心臓病のリスクが低い傾向にあることを示した研究報告だ。
夜勤は医療や警察、消防、交通機関などのインフラとして社会に不可欠な役割を担っている。一方、人間の体は本来、夜は眠って体を修復する仕組みになっているため、睡眠や生体リズムを乱し、冠動脈疾患(CHD)などの心血管リスクを高めることが知られている。
この研究では、夜勤に伴うCHDリスクの上昇が、食物繊維の摂取といった食習慣と関連するかどうかを調査した。調査は、英国バイオバンクに登録された38歳〜71歳の男女22万2801人(女性53.8%、平均年齢52.6歳)のデータを対象に行われた。
約12年の追跡期間中に、1万2265件の致死性と非致死性のCHDが確認されている。参加者は「日中勤務者」「不定期に夜勤をする交代勤務者」「定期的な夜勤従事者」の3グループに分類され、アンケートによって食習慣の摂取状況を評価した。
分析の結果、食物繊維の摂取量が少ない夜勤従事者は、多い人に比べてCHDリスクが高い傾向がみられた。常時夜勤者では1日当たり約19g、不定期の夜勤者では約15gの食物繊維を摂取している場合、日中勤務者とほぼ同等のリスクレベルになることが示された。
研究チームは、全粒穀物や野菜、果物、豆類、レンズ豆といった食物繊維の豊富な食品の摂取を増やすことが、夜勤者の心臓の健康を守る手軽な方法になりうると指摘している。ただし慢性的な消化器疾患など、食物繊維の増量が医学的に適さない場合もあるため注意が必要であると続けている。
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