生成AIの台頭によって、IT起業のセオリーは根底から覆りつつある。サービス・プロダクト開発の難易度は下がり、少ないリソースで事業を始めやすくなった。しかしこの事実は模倣や後追いが容易になり、競合や大手に代替されないユニークな価値の創出が難しくなったことも意味する。
連続起業家で、ビジネスインフルエンサー「けんすう」としても知られる古川健介さんも「(起業の)ハードルが上がった。これまではサービスを作れるかどうかで差ができていたが、そうではなくなってきている」と評する。
一方で、この状況下だからこそ価値の高まる能力や立ち回りもあるという。競争の激しくなった中、これから起業する人は何に目を付け、どんな事業を立ち上げるべきか──けんすうさんへのインタビューから、その輪郭を探る。
生成AIの台頭によって、IT起業のセオリーは根底から覆りつつある。サービス開発の難易度は下がり、少ないリソースで事業を始めやすくなった。一方で模倣や後追いが容易になり、競合や大手に代替されないユニークな価値の創出は難化しつつある。この状況下での起業に必要な考え方を、現役経営者たちに聞く。
けんすうさんは起業を巡る現況について「“独自の資産”を持っていて、AIによってブーストできる状況になっていると強い」と話す。背景にあるのは、サービスを作れることの価値が下がった結果、サービスを広げたり、ブランドを構築できたりすることの価値が相対的に上がっている事実だ。
例えば学生向けのSNSを作ることは簡単になったが、学生の利用を広げることの難易度は変わらない。そのため、同じサービスなら社会人起業より学生起業の方が、学生のコミュニティーに触れやすいぶん有利かもしれない。
他の例えもできる。無名の会社でも大手サービスの模倣品を作れるようになったが、大手のような看板やブランドがなければ信用してもらえず、利用につながらない──といった具合だ。
学生向けSNSの例えで言えば、学生の集まるコミュニティーとの接点がAIでブーストできる資産になる。大手サービスの模倣でいえば、大手のブランドが今後AIでブーストでき得る資産になっているわけだ。
ただ、この見方ではすでに資産がある人が強く、そうでない人は先行者に立ち向かえないことになる。けんすうさんもその傾向はあるとしており、特にAIの開発や利用を巡る計算資源の分野ではそれが顕著だとした。
一方で、“独自の資産”は必ずしも金銭的・物質的なものには限らないとけんすうさん。業務オペレーションへの理解などがいい例だ。例えば社会経験のない学生がメディアや広告事業者向けのソリューションをAIで作っても、現場の業務を理解していなければ、的外れなものが完成してしまう。先に述べたコミュニティーもこれに当てはまる。
他にも、イーロン・マスク氏が掲げる火星移住のように、起業家自身が強烈もしくは独特な世界観を持つことも、差別化要因になる可能性がある。自分がそういった目に見えない資産をどれだけ持っているか、その中で重要な資産は何か見極めることも肝要という。
同様の考え方を実践できているスタートアップの一例として、けんすうさんはLayerXを挙げる。「企業の業務フローに入り込んで『1つだけ他社のSaaSを入れるより、LayerXのサービスを入れた方が楽で便利』な状況を作りつつ、AIを使って開発速度を上げ、他社が作れそうなソフトをどんどん先に作っている。(自社にとって)重要な資産が何かを理解している」と評する。
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