米Googleは3月25日(現地時間)、量子耐性暗号(Post-Quantum Cryptography、PQC)への移行ロードマップを前倒しし、2029年を目標時期として進めると発表した。PQCは、将来の量子コンピュータでも破られにくい新しい暗号方式の総称で、現在広く使われている公開鍵暗号や電子署名の代替として導入が進んでいる。
現在のデジタル社会では銀行の送金から企業秘密に至るまで、多くの情報が公開鍵暗号によって守られている。だが、量子コンピュータが実用化されれば、これらのデジタルロックも突破されてしまう懸念がある。
Googleが移行の目標時期を2029年に設定した背景には、量子コンピューティングのハードウェア開発、量子誤り訂正、量子素因数分解のリソース見積もりにおける近年の急速な進歩がある。
特に、暗号化されたデータをとりあえず盗み出しておき、将来の量子コンピュータで解読する「store-now-decrypt-later」(今保存して、後で解読する)攻撃が、今日の暗号化に対する現実の脅威となっているという。さらに、将来的に暗号論的意義のある量子コンピュータが登場した際の電子署名への脅威も見据え、オンラインセキュリティの要である認証サービスのPQC移行を急務と判断したとしている。
同社は、自ら2029年という野心的なタイムラインを示すことで、自社だけでなく業界全体のデジタル移行に向けた明確さと緊急性を提供する狙いがあるとしている。
すでにその具体的な施策は始まっており、その具体例として同社は、次期モバイルOSの「Android 17」でPQC対応を進める計画も発表した。次のAndroid 17のβ版でPQC強化のテストを始め、正式版で一般提供する予定だ。起動時の整合性を検証する「Android Verified Boot」にPQCの電子署名アルゴリズム「ML-DSA」を導入するほか、「Android Keystore」でのML-DSAサポート、「Google Play」で従来方式とPQCを組み合わせたハイブリッド署名の導入を進める。これにより、OS起動時からアプリ配布までの「信頼の連鎖」を量子耐性のある仕組みに置き換えていく考えだ。
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