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なぜ燃えるモバイルバッテリー 旅客機内は使用禁止に "非常識"な「中華電池」も登場

» 2026年04月27日 10時27分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 モバイルバッテリーが発火する事故が相次ぎ、国土交通省は4月24日から旅客機内での使用を禁止する安全基準の適用を始めた。スマートフォンなど小型電子機器の高機能化もあり、モバイルバッテリーでの手軽な充電の需要は高まる一方だが、ひとたび発火すれば大きな被害につながりかねない。市場では安価な海外製も多く流通しているが、価格は多少割高でも安全性を重視した日本製の存在感が増している。

photo 内蔵のリチウムイオン電池が膨張したとみられ、外装がぱっくりと開いたモバイルバッテリー=23日、大阪市浪速区(渡辺大樹撮影)

 大阪メトロ御堂筋線大国町駅(大阪市浪速区)に停車中の電車内で19日昼、乗客がかばんに入れていたモバイルバッテリーが発火。床で炎を上げて燃え上がり、避難する乗客で騒然となった。駅員らが消し止めてけが人はなかったが、御堂筋線は一時運転を見合わせ、約3万人に影響した。

 発火事故は各地で起きており、昨年7月にはJR山手線車両内で5人が軽傷を負う事故が発生。同年10月には、負傷者こそ出なかったが、離陸直後の全日空の航空機で発煙する事故もあった。

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 国交省は今月24日から、旅客機内での発火や発煙を防ぐため、モバイルバッテリーの機内への持ち込みを最大2個までとし、機内電源からのバッテリー本体への充電や、バッテリーから他の電子機器への充電を禁止するなどの安全基準を適用した。

 なぜモバイルバッテリーは燃えるのか。電池材料の研究開発を受託する大阪ガス子会社・KRIの木下肇常務執行役員は、モバイルバッテリーに内蔵されるリチウムイオン電池が要因だとし、「電池の中は燃えやすい液体の『電解液』で満たされているので、本体に問題が起きれば発火してしまう」と説明する。

 落下や圧迫で内部が傷んだり、過充電や高温の環境で使い続けたりすると、電池内で急激に熱が発生し、液体が分解してガスが発生。さらに温度が上がれば熱暴走(熱による異常反応)に至り、発火や発煙につながる。

 木下氏は「各メーカーが性能を競う中で、安全性よりもエネルギー密度を上げて製品を売るという方向に傾き、事故が増えたのではないか」と指摘する。エネルギー密度を上げれば充電容量は大きくなり、モバイルバッテリーは小型化できる。

 事故多発の背景には、スマホなどの電子機器の高性能化が進んでいることもある。動画や音楽の視聴、ゲームで休みなく使い続ける状況が増えるに伴い電子機器の電池消費が早まるため、頻繁に充電する必要性が増す。

 損害保険ジャパン子会社のMysurance(マイシュアランス、東京)のモバイルバッテリーに関する調査では、熱さや膨張など異常を感じても使用を続けるとの回答が39.3%もあった。

 便利で手軽であるため漫然と使われている実態もあるが、発火などのリスクを再認識し、適切な使用が求められる。(桑島浩任、井上浩平)

激安品横行 「安全」マーク確認を

 モバイルバッテリーの発火事故を防ぐため、各メーカーは内蔵のリチウムイオン電池の素材を改めた新製品を続々と投入している。一方、発展途上の最新技術を活用したとする中国製品も登場しており注意が必要だ。

 製品評価技術基盤機構(NITE)によると、2020〜24年に報告されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は1860件あり、このうち約85%が火災事故につながった。製品別でモバイルバッテリーが最多だった。

 各メーカーは発火対策として、従来の電池で使われてきた燃えやすい「電解液」を固めるなどした「半固体」や「準固体」といわれる電池への切り替えを進めている。

 半固体は、電解液を減らし、ゲル状など固体に近い状態の材料を組み合わせたものをいう。準固体も同様に液体成分を抑えた構造となっている。

 近年、国内メーカーがこれらの電池を採用した安全性の高い製品に注力する中、最先端技術の「全固体」をうたう中国製品も現れている。

 ある中国メーカーは、電解液を固体材料に置き換えた「全固体電池搭載」のモバイルバッテリーを宣伝。全固体電池は長寿命・高性能化の期待がかけられているが、業界では開発は市場投入の段階までは進んでいないというのが常識だ。

 市場では極端に安い製品や海外直送品も多く出回る。消費者に対し、専門家は電気用品安全法に基づき製品の安全性を示す「PSEマーク」と国内事業者名の表示確認を推奨している。(桑島浩任)

NITE宮川七重氏「デリケートな製品、取り扱い慎重に」

 リチウムイオン電池を使う製品の事故が増えている最大の理由は、モバイルバッテリーのように持ち運んで日常的に使う機器が広がり、母数が膨らんだことにある。異常が表れやすいのは充電時で、不具合があるのに使い続けると発熱や膨張が顕在化する。

 安全に使うには、まず電池はデリケートな製品だと認識しなくてはならない。落下などの衝撃を避け、極端な高温や低温の場所に置かないことが取り扱いの基本となる。特に夏場は製品がうまく放熱できずに事故につながりやすいため、自動車内や室内での放置は避けたい。落とした直後に正常に動いても安心せず、その後も発熱や膨らみがないか注意が必要だ。

 充電は就寝中は避け、外出時は放置せずに目の届く範囲で行うべきだ。異常があればすぐに充電や使用をやめ、廃棄時は自治体の分別ルールに従った適切な処分が欠かせない。(聞き手 桑島浩任)

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