「断腸の思いもあるが」――松下が「パナソニック」に社名変更
「ノスタルジーではなく、会社の世界的な発展を目指して」松下が社名を「パナソニック」に変える。90年間親しんだ名を捨て、「世界のパナソニック」を目指す。
松下電器産業は1月10日、社名を「パナソニック」に変えると発表した。「National」(ナショナル)ブランドも廃し、「Panasonic」(パナソニック)に一本化する。
「真のグローバルエクセレンス(世界的優良企業)になるには、ブランドを統一して全従業員の力を結集する必要があると判断した」――松下電器産業の大坪文雄社長は1月10日、大阪府内で会見し、社名変更の理由をこう説明した。
創業以来90年間使い続けた「松下」の社名を捨てるのは、「断腸の思いもあった」と打ち明ける。「私が入社したのも『松下電器産業』。個々人にはノスタルジーもあるだろうが、会社としての発展や成長の可能性につながる決断になるよう努力したい」
また同日、2008年度の経営方針も発表した。普及価格のBlu-ray Discレコーダー投入、世界・最小最軽量の一眼レフカメラの開発、大型の有機ELテレビ開発に向けた準備などを行っていく。
「松下」にはローカルなイメージがある
社名変更は07年秋、「若手メンバーに検討をお願いした」結果、決めたという。6月下旬予定の定時株主総会で承認をえた上で、10月1日付けで変更する。「松下」の名が入ったグループ企業もすべて「パナソニック」名に変更。松下電工は「パナソニック電工」に変わる。
国内の白物家電向けに展開してきたNationalブランドも、社名変更と同時にPanasonicへの切り替えに着手。09年度中にPanasonicに統一する。全国の「ナショナルショップ」も順次Panasonicブランドに変えていく。
「松下のブランド価値は、商品の内容と比べて伸びていない。その一因は、ブランドが『松下』『Panasonic』『National』の3つに分散していること。『松下電器』という名にはどうしてもローカルなイメージがある。
世界トップクラスのブランド力を備えたグローバルエクセレンスになるには、分散していた力を1つの価値に集中させることが必要。さまざまな方に支えられてきた創業以来の社名を手放すのは大きな決断で、それ以上の価値を生み出す責任がある」――大坪社長は決意を語る。
創業者・松下幸之助から引き継いできた経営理念は堅持すると強調した。「創業家には昨年12月に説明し、すぐに賛同してもらった。『会社は社会の公器』など、松下幸之助の経営理念は守っていく」。
変更に伴う費用は300億円程度を見込んでいる。
有機ELは「2015年ごろから」
08年度は、普及価格のBlu-ray Discレコーダーを投入するほか、世界・最小最軽量の一眼レフカメラを開発すると表明。将来の有機ELテレビ投入に向けた準備も進める。ただ「ELテレビの展開はあくまで大画面で考えている」とし、「2015年ごろから立ち上がるというイメージ」で、具体的な開発計画などは明かさなかった。
薄型テレビ事業は、37インチ以上で世界シェア25%を目指す。「大画面化はプラズマで引っ張るが、それでまかなえないものを液晶で補完する」といい、経営権を日立製作所から取得する予定の液晶メーカー・IPSアルファテクノロジを通じてパネルを調達。液晶のボリュームゾーンを意識し、40インチ台と比較的大型な液晶テレビ発売も視野に入れる。
液晶でライバルとなるシャープは、第10世代基板に対応した新工場を建設中で、マザーガラスの大型化でコスト効率を上げる考えだが、IPSアルファが建設予定の新工場は第7〜8世代がターゲット。コスト効率で劣るのではという質問に対し、大坪社長は「IPSのパネルは透過率に優れている。トータルコストでは不利な立場にない」などと説明した。
イメージセンサー工場に940億円投入
半導体工場への新たな投資も発表した。デジタルカメラなど向けのイメージセンサー新棟を、富山県の砺波(となみ)工場に、約940億円を投じて建設。09年8月に生産を始め、月産3万個を目指して順次拡大していく。「デジカメ向けCCDの世界シェアは現在4割。さらに生産能力を拡大する」
08年度の経営計画では、(1)売上高は前年度比5%以上、(2)ROE(株主資本利益率)8%以上、(3)CO2排出量は10万トン以上削減――を掲げる。海外では、BRICs+V(ブラジル、ロシア、インド、中国、ベトナム)で富裕層をターゲットにした事業を加速させるほか、欧州市場に冷蔵庫、洗濯機を投入。海外売上高2けた増を目指す。
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