トップからボトムまでインテルがやります
Intelのゲルシンガー氏が日本を訪れた。COMPUTEX TAIPEI 2008が来週から始まるという、このタイミングで、彼は日本人になにを伝えたかったのだろうか。
COMPUTEX TAIPEI 2008が来週の火曜日、6月2日から始まる。その直前となる5月30日に、米Intel上席副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のパトリック・ゲルシンガー氏が日本の関係者に向けて講演を行った。
その内容は、2008年4月に行われたIDF上海のキーノートスピーチで紹介された内容を“ぎゅっ”と圧縮した感じの「ペタスケールからミリワットまで」と題するもので、「ペタ」の極となるハイエンドサーバやHPCに関しては、クアッドコアの「Tukwila」、6コアの「Dunnington」などで代表されるサーバ、HPCのさらなる進化や、仮想化コンピューティングの需要が従来の開発環境に限られたものから検証作業、データセンターにおけるノードの増加などにも広がり、消費電力の節約やトータルの管理コスト削減などの効果が期待されることと、仮想化されたマシンのパフォーマンスがネイティブマシンに相当するようになるとの見通しなどが説明された。
ゲルシンガー氏は、CPU開発における「TickTock」にも言及し、2008年の第4四半期に登場するNehalemの特徴を述べるとともに、次の開発フェーズにおける“Tock”で登場するといわれている「Sandybridge」について説明した。そのなかでゲルシンガー氏は、これまでの技術セッションなどで明らかにされた「Intel Adbanced Vector eXtension」(Intel AVX)を取り上げ、128ビットから256ビットへと拡張されたベクターや効果的なデータアクセスが可能になる関数の追加、コードサイズを小さくするとともに並列化処理を可能にする3つのオペランドによる構文への対応など、Intel AVXのメリットを紹介した。
ゲルシンガー氏は、続けて、ビジュアルコンピューティングに話題を移し、従来のシステムで行われていたグラフィックス処理とこれからのビジュアルコンピューティングで求められる描画処理について、フォトリアルなレンダリングや3Dモデルベースの演算処理のために、これまでの硬直的なパイプラインアーキテクチャからプログラマブルで統一されたアーキテクチャが必要と述べた。その構成要素としては「マルチスレッドに対応する高性能のCPU」や「内蔵、または、ディスクリートなグラフィックスコア」が求められるとし、ビジュアルコンピューティングのアーキテクチャとしてこれまでも繰り返し紹介されている「Larrabee」について、多数のIAコアを統合したスループットアーキテクチャなどを紹介した。
以上は、ハイエンドサーバやHPCを想定した「ペタスケール」の部分であるが、逆方向となる「ミリワット」として注目されるのが、IDF 上海で正式発表されたAtomだ。ゲルシンガー氏はモバイルプラットフォームにおける「MID」「Netbook」「ノートPC」の区別を画面サイズとOS、主な用途で行い、低電力と低コストが求められるNetbook、インターネットにおける高い互換性を実現するIAベースのMIDでAtomを採用するプラットフォームが導入され、これまで「Menlow」という開発コード名で呼ばれてきた「Centrino Atom」とそれに対応する「Intel System Controller Hub」の特徴が説明された。
COMPUTEX TAIPEI 2008でインテルは、恒例のキーノートスピーチのほかに、デスクトップPCに関する発表とウルトラモビリティー関連のセッションなどを予定しているが、そこで、次世代のデスクトップ向けチップセットの正式発表とMIDの製品展示を行う可能性があるとみられている。ただ、その次世代チップセットや、先日リリース延期の情報が流れた次世代ノートPC向けプラットフォーム「Centrino 2」について、ゲルシンガー氏は何も触れなかった。
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