McAfeeの買収に見るIntelの「全方位外交」:Intel Developer Forum 2010(3/3 ページ)
自作PCユーザー的な主役は「Sandy Bridge」だが、ITビジネスに興味があるなら、IDF直前の「McAfee買収」も気になる。その狙いを基調講演で探る。
Intelが提供するのは「選択の自由」
1つのベンダーが、ハードウェアからソフトウェア、さらにサービスまでのすべてに関する技術を所有しようとするのは昨今のIT業界でよく見られる。典型的なのはスマートフォンの領域までカバーしてしまったAppleだが、米Hewlett-Packard(HP)がPalmを買収してAppleと似た垂直統合を進めるなど、この傾向はいっそう強くなっている。
企業向けの分野でいえば、最近では米Oracleが米Sun Microsystemsを買収して、純粋なソフトウェア企業からハードウェアを抱える企業へと急展開するだけでなく、これまで異なる分野を補完しあうパートナー関係だった企業と競合にケースが増えてきた。1社がすべての領域をカバーして顧客に提案する傾向は今後も強くなる見込みで、特に買収と合併(M&A)で各分野の企業が大手数社に集約しつつ流れでは当然のスタイルともいえる。
では、Intelはどうだろうか? これまで、規模は巨大であっても半導体メーカーの1つに過ぎなかったIntelが、現在ではOSを含むソフトウェアスタックを抱えている。さらに「AppUp」というAppleのApp Storeのようなアプリストア事業まで始める。
これまでの経緯でいえば、OSベンダーであるMicrosoftと競合するし、先ほどGoogle TVで名前の出たAndroidに対しても、Intelは競合となるMeeGoというOSプラットフォームを展開する。アプリストアのようなサービスでは、さらに多くの企業と競合するだろう。
その一方で、Intelの買収戦略とその後の展開は興味深い。Wind Riverは買収が完了して完全にIntelの子会社になっているが、一方で独立した企業として現在も運営を続けており、既存顧客にIntelのx86以外のプラットフォーム、例えばARM向けのOSやツールを提供し続けている。買収後で唯一の変化と呼べるのが、x86向けの開発リソースを強化し、Intelと連携する機会が増えたくらいだ。
この流れは、まだ買収が完了していないMcAfeeやInfineonでも同様とみられ、あくまで独立した企業体としての運営を続けて既存顧客とのつながりを維持しつつ、技術連携やx86への移植は積極的に進めるようだ。
Intelは、自らMeeGoのようなOSプラットフォームを持つにも関わらず、WindowsやMac OS、Linux、Android、Chrome OSまで、すべてのプラットフォームに対して中立の立場をとる。こうしたユーザー(とOEMベンダー)に「選択の自由」を提供することを、Intelは「Port of Choice」と表現しているが、どのプラットフォームが優勢になってもIntelのメリットになるというのが同社の買収戦略、そしてプラットフォーム戦略の目指すところだ。
もちろん、Intelにとって究極の目的は、x86プラットフォームの拡大であり、一連の買収はそれを支援するものともいえる。x86プラットフォームの拡大で重要な役割を担うAtomの拡大戦略については、次回のIDF 2010リポートで詳しく紹介したい。
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