Intelが過去10年で製品化した“技術の殿堂”トップテン:Research@Intel 2012(2/2 ページ)
米Intelは、同社の研究開発成果を発表する「Research@Intel 2012」を開催した。そこで、ジャスティン・ラトナー氏が訴求する“技術の殿堂”とは?
省電力と仮想化、そして、モバイルコンピューティングの向上を重視する
River Trail Draft API(ベース技術:Data Parallel Extentions for JavaScript)
Labsで出展していた、物理演算などのパラレルコンピューティング向け演算処理エクステンションだ。2011年8月にRiver Trail Draft APIの名称で正式提供を開始している。特に、物理演算を多用したゲームや3D表示において、マルチプロセッサ環境を用いた場合に最大10倍の演算速度向上が期待できるという。
Intel Power Optimizer(開発コード名:Platform Power Management)
APMやACPIに次ぐ、統合電源管理ソリューションの1つだ。2013年初頭にも発表するとみられる“Haswell”採用のUltrabookにおいて、最大20倍の電力消費抑制を可能にするという。これにより、“Hawell”ベースのUltrabookでは、バッテリーで丸一日駆動することを目指すほか、Connected Standby状態で10日の無充電運用が可能になるという。
Intel vPro Technology(ベース技術:Robust Self-Healing Systems and Networks)
Self-Healing Systems and Networks(自己修復システム/ネットワーク)と呼んでいるが、実際には、クライアントの管理機能を強化することでシステム全体の稼働状況を把握したり、ネットワーク経由での攻撃や侵入検知など、自己防衛的な仕組みを早期展開できるシステムの総称だ。最新世代ではUltrabook向けvProの提供も開始している。
Intel Smart Connect(ベース技術:Always-On、Always-Connected)
ソーシャルメディア全盛の現時点において、リアルタイムでの情報アップデートは、モバイルデバイスの必須要件となりつつある。だが、「ハイパフォーマンスで動作しつつ、未使用時はアイドル状態」だったデスクトップPCに対し、モバイルPCでは、「非操作時も低消費電力で動作し、常にアップデートをチェックする」動作が求められる。これを実現するのがIntel Smart Connectだ。スリープ状態に新しい動作モードを追加し、低消費電力で、かつ、その状態でもネットワークにアクセスして、情報のアップデートをできる状態を作り出している。
Xeon Phi(ベース技術:Teraflops Research Processor)
「Tiles」などの名称で呼ばれていた80コアを持つTeraflops Research Processor(開発コード名:Polaris)は、後にSingle-chip Cloud Computer(開発コード名:Rock Creek)へと進化し、最終的に2012年のSCで発表した「Xeon Phi」へと続いている。HPCでの利用を主眼としており、特に並列動作時のパフォーマンスを重視している。
Intel Wireless Display(ベース技術:Carry Small, Live Large)
「WiDi」の名称で知られるPC画面のワイヤレス伝送技術だ。専用のアダプタを提供していて、これを利用すれば、対応するモバイルデバイスから大画面テレビに画像をストリーミングで転送できる。
世界各国の研究機関との協力関係が必須
ラトナー氏は、Intelが進める「Intel Collaborative Research Institute」(ICRI)と、「Intel Science Technology Center」(ISTC)という2つの研究開発プロジェクトについても最新アップデートの報告した。現在の企業における研究開発は、社内だけでは完結せず、大学などの研究機関に出資して、そこで共同作業を行うケースが多くなっている。
ICRIは、この外部機関と連携する研究開発プロジェクトの1つで、主に世界の研究開発機関を対象としている。開始当初は「Connected Contextual Computing」「Visual Computing」の2分野でスタートしたが、2012年5月には「Computational Intelligence」「Secure Computing」「Sustainable Connected Cities」の3分野を加え、欧州、台湾、イスラエルの研究機関と共同でプロジェクトを進めている。
ICRIの米国版と呼べるのがISTCだ。各分野ごとに中心となる研究機関(大学)を選定し、そこを中心的なハブとして、多数の拠点に分散している研究者らとのコラボレーションによる研究を進めるのがプロジェクトの狙いとなる。Intelによれば、過去5年間でISTCに投じた資金は1億ドル以上で、Intelの研究開発プロジェクトでも主力となっている。
R@I 2012では、新たな研究開発分野として「Social Computing」を立ち上げ、その中核機関としてカリフォルニア州立大学アーバイン校(UC Irvine)を選定したことを発表した。基調講演には、UC Irvineのインフォマティクス分野で教授のパウル・ドリシュ氏とIntelフェローのジェネビエブ・ベル氏が登場し、今回の背景について説明した。
ドリシュ氏によれば、Intelのバックアップにより、米国5拠点に散在するプロフェッショナルを集めたチームを編成できるようになったとISTCの意義を説明する。このチームでは、ソーシャルコンピューティングで得られるデータをどのように活用し、応用していくかの研究が中心となるようだ。ベル氏は、R@I 2010の基調講演でも登場しているが、ラトナー氏とともに「Interaction and Experience Research Lab」の立ち上げを発表している。今回はその成果の一環であり、R@Iの発表を通して研究開発が少しずつ進んでいることがうかがえる。
開始当初は、基礎技術を“そのまま”紹介する展示が多かったR@Iは、年々その内容を変化させ、紹介するテーマも毎回絞りつつある。特に、2012年は「人と生活」におけるコンピュータの活用をメインとした展示が多く、よりユーザーに直接訴えかけるものが多くなっていた。後編では、これらの展示を紹介し、Intelが考える「人と生活におけるコンピュータ」の未来を紹介しよう。
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