レビュー

BRAVIAを吸収してテレパソの完全体となったか?――「VAIO L」を今こそ見直すZとは違う最強がココに(1/5 ページ)

VAIOノートからテレビチューナー搭載機が姿を消した今、PCならではの高度なテレビ機能を存分に味わいたいならば、この「VAIO L」が筆頭候補に挙げられる。

VAIOのテレパソで頂点に君臨するボードPCに迫る

「VAIO L」の2012年夏モデルにおいて、店頭向け最上位機となる「SVL24119FJB」

 「VAIO L」シリーズは、ソニーが“ボードPC”の愛称のもとに展開している、24型フルHD液晶一体型のデスクトップPCだ。

 一回り小さな21.5型フルHD液晶を一体化した「VAIO J」シリーズも下位機種として用意されており、テレビ番組の視聴や録画など、いわゆる“テレパソ”としての機能はどちらでも楽しめるが、後述する付加機能の多くはVAIO Lシリーズ、それも今回取り上げる店頭モデルの最上位機「SVL24119FJB」および直販モデル「SVL2411AJ」に限られる。

 VAIO L SVL24119FJBは、全3モデルで構成されるVAIO Lシリーズ店頭モデルの頂点に立つだけでなく、実質的にVAIOのデスクトップPCにおけるフラッグシップとしての役割も担っているのだ。

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 最上位機らしく、VAIO L SVL24119FJBの量販店での実売価格は21万円前後と、絶対的な価格としてはかなり高い(性能や機能を考慮すると、妥当な価格設定ではあるのだが)。そこを承知であえて液晶一体型PCとしてのVAIO L SVL24119FJBに注目するユーザーは、PCとしての基本的な性能や機能はもちろんのこと、AV機能に対しても妥協のない画質や性能を求め、それらの融合によるまったく新しいユーザー体験を期待しているはずだ。

 この期待に対して、過去の液晶一体型モデルでは、残念ながら満点の回答とはいい切れない部分もあった。価格の高さと相まって、フラッグシップモデルは特に敬遠されがちだったと思われる。果たしてこのVAIO L SVL24119FJBは、新たな世界を見せてくれるのだろうか。

品質にも機能にもこだわりが光る液晶ディスプレイ

24型フルHD液晶ディスプレイは、グラスレスでの3D立体視や最大10点のマルチタッチに対応する。表面はグレア処理で、画面とフレーム部に継ぎ目はなく、シームレスにつながっている

 VAIO L SVL24119FJBは、テレビの視聴・録画機能を持つWindows PCを、24型ワイド液晶ディスプレイに一体化した製品だが、全体の構成としては“PCを背負った液晶テレビ”という表現がしっくりくる。

 それはPCっぽさの感じられない、ほぼテレビそのものといえる外観デザインが端的に表しているが、実用上も、Windowsとは別に電源オンの後にすぐ利用できる地上デジタルチューナーを1系統「スグつくTV」の名称で内蔵し、単純に液晶テレビとして本製品を利用することができる。

 さらに、PCとスグつくTVのほかに、HDMIとコンポジットビデオの各入力端子も1系統ずつ備わっており、24型フルHD液晶ディスプレイとしての機能も、内蔵のPCとは関係なく利用可能だ。付属リモコンの「入力切換」ボタンで手軽にテレビ映像と外部入力の映像をスイッチできるあたりも、テレビと同様の感覚で使え、違和感がない。

 見た目や使い勝手の点だけでなく、画質面でも“ソニーのテレビ”といい切れるだけの進化を遂げている。2012年夏モデルのVAIO Lシリーズでは、前述の各入力信号を切り替える機能と液晶パネルとの間に、BRAVIAシリーズで採用されている高画質エンジン「X-Reality」が実装されたのだ。

 X-Realityは高精細化(いわゆる超解像)、ノイズ低減、色再現性向上といった機能を担い、PCとしての利用時はもちろん、スグつくTVでも、HDMI入力時でも、すべての映像コンテンツをより美しい画として楽しむことができる。ユーザーの素朴な気持ちとしては、むしろこれまで搭載されてこなかったことが不思議に思われるほどだが、部門間の壁を超えて同社のAV関連技術全体をこの1台に凝縮したことで、画質面でも妥協のないBRAVIAそのものであることを強くアピールする。

 細かな使い勝手の面でもBRAVIAへのアプローチがなされ、同シリーズに搭載されている10フィートUI「NUX」がVAIO Lにも採用された。先に挙げたスグつくTV、PC、HDMI入力の切り替えだけでなく、スグつくTVの各種設定、画面の設定からPCアプリの切り替えまで、リモコンのボタン1つで簡単に設定画面を呼び出すことができ、しかもある程度距離が離れた状態でも画面の文字が大きく操作しやすい。

リモコンのボタン1つでWindowsを起動せずに「スグつくTV」を起動でき、外部入力端子からの映像切り替えもワンタッチで行える(写真=左)。背面には、HDMIの入出力端子とコンポジットビデオの入力端子端子を備える(写真=右)
スグつくTVは、BRAVIAと同様のUI「NUX」を採用。ここからWindowsを起動し、PC上のテレビ録画アプリ「Giga Pocket Digital」に切り替えることもできる

 さらに、最上位機だけの特権として、3D立体視にも対応。2012年夏モデルでは裸眼での3D立体視機能(レンチキュラー方式)を実装し、3Dグラスなしでも立体感のある映像を手軽に堪能できるようになった。PlayStation 3など、3Dコンテンツの出力が可能な機器をHDMI端子経由で接続することも可能だ。また、シミュレーション機能も搭載しているので、3D対応コンテンツでなくても、擬似的に3C立体視の感覚を味わうこともできる。

 かつて「VAIO F」に存在した、アクティブシャッター方式と4倍速液晶の組み合わせによる3D立体視に比べると解像感がかなり低下し、クロストークの発生もあるが、何といっても手軽に楽しめる便利さは見逃せない。液晶パネルに正対しなくても、立体的な映像をできるだけ正しく見られるよう、ユーザーの顔の位置を認識して自動補正するフェイストラッキング機能まで盛り込まれ、ラフな格好で見てもちゃんと3D立体視が行える。

 最上位機ならではといえば、静電容量式タッチパネルによる直感的な操作感もポイントだ。従来機の光学式タッチパネルから方式を変更することで、最大10点までのより高精度なマルチタッチ対応を果たした(従来は最大2点)。

3D立体視での視聴やコンテンツ作成が可能なアプリは「VAIO 3D ポータル」と呼ばれるランチャーにまとめられており、対応アプリをすぐに見つけられる(画面=左)。タッチ操作に対応したアプリをまとめたランチャーの「VAIO Touch Portal」も用意する(画面=右)
ディスプレイ部の底面には2.1chスピーカーを内蔵している。

 映像品質の進化に伴い、音質についても手が加えられている。本体下部の目立たない位置に設置された出力6ワット+6ワットのスピーカーには、出力8ワットのサブウーファーが追加された。

 これらのハードウェアと、原音の忠実な再生に注力した「S-Master」、スピーカーの音響特性を補正してノイズを低減する「CLEAR PHASE」、サウンドの立体感を高める「S-FORCE Front Surround 3D」といった高音質技術との組み合わせにより、音が下にこもる印象は感じられず、音量を上げると集合住宅ではためらわれるほどの迫力が得られる。

 実際に試聴してみると、液晶一体型PCの薄い本体から出力されているサウンドとはにわかに信じがたく、高品質かつ多機能な映像再生を盛り上げてくれる。

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