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「Apple Music」の可能性――世界で、そして日本で支持されるのか?本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

久々に“One more thing”のフレーズが飛び出した「WWDC 2015」の基調講演。その正体である「Apple Music」を中心に、発表内容が示すAppleの変化を考察する。

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日本でもApple Muiscは6月30日に始まるのか?

 最後に、日本におけるApple Muiscのサービス開始状況について、数カ所に話を聞いてみた。ご存じのように日本ではソニーの「Music Unlimited」が撤退した後、Spotifyに統合されたものの、Spotifyへの楽曲提供を日本の各音楽レーベルが拒否している。理由はSpotifyが広告+無料サービスで利用者を増やしたうえで、一部のコアユーザーから料金を徴収するフリーミアム型のビジネスモデルを採用しているからだ。

 日本国内向けの加入型音楽配信サービスとしては、サイバーエージェントの「AWA」、LINEの「LINE MUSIC」も挙げられる。AWAはフリーミアムではなく、登録後最初の3カ月は無料ながら基本的に有料のサービスだ。LINE MUSICは現時点でサービスインしていないが、基本的な料金形態は同じと考えられる。

 それでは「ここにApple Musicも加わるのか?」という話だが、Apple Musicはフリーミアムではないため、その点ではSpotifyよりも可能性があると言えよう。現地報道や筆者の聞き取りによれば、今のところ6月30日にサービス開始予定の国に日本も含まれているようだ。

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日本のApple Music紹介ページには「まもなく登場」と表示されているが……

 ただし、日本の大手音楽レーベルがApple Musicへの楽曲提供に合意したとの話は、今のところ聞いていない(ただし、すべてのレーベルを確認したわけではない)。外国曲の頒布権も、ネット配信の権利が曖昧だった時代の楽曲(ネット配信の権利を分けていない時代の契約)や、日本での頒布権を切り売りしている場合もあり、詳細を詰めるところでは難しい面もあるだろう。

 あるレーベルの関係者は「これまでもAppleはサービスや製品の発表を先行させ、世論の空気を作ってから交渉することが多々あった。今回も同じではないか。LINE MUSICのスタートが遅れたように、交渉はしていても簡単には決まらない。今回も、対象外となるアーティストや新曲など例外曲はありつつ、配信の権利が確定している楽曲だけに限定して日本も提供する形になるのでは」と予想していた。

 インターネットサービスを存分に使っているだろう本誌読者から見ると不思議に思うかもしれないが、日本ではCDからダウンロード販売への移行は進まなかった。北米はCDが売れなくなり、そのぶんダウンロード販売のビジネスが急速に立ち上がったが、日本はダウンロード販売への移行というプロセスを経ている……と言えるほどには存在感が出ていない。

 日本の音楽レーベルが、加入型音楽配信サービスに消極的なのは、日本の音楽産業の実情と合っていないから、という理由もあるという。とりわけフリーミアムへの抵抗感は強い。しかし言い換えれば、フリーミアムではないApple Musicとの相性はいいのかもしれない。

 もっとも、水面下で調整が進んでいる可能性は否定しない。果たして、本当に日本でApple Musicが開始できるのか。あるいはもくろみ通りにはいかないのか。まずは6月30日の状況を見極めることにしたい。

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