Macを未来へと前進させる低価格化戦略:WWDC 2009現地リポート(3/3 ページ)
WWDC 2009の基調講演の様子を、直後に行われたインタビューの内容を交えながら振り返ってみる。まずは新型「MacBook Pro」と次期Mac OS X「Snow Leopard」編だ。
Macを、自宅でも職場でも
サレー氏は、最後にExchangeの対応についても触れた。今日、多くの人がMacを使うようになり、自宅だけでなく職場で使う人も増えてきた。そうした中、多くの企業が採用しているコラボレーションサーバ「Microsoft Exchange Server」との連携が重要になりつつある。そこでSnow Leopardでは、このExchangeとの連携機能をOSの中に標準で盛り込んだというのだ。
具体的には、メールソフトのMailと、カレンダーソフトのiCal、そしてアドレスブックがExchangeに対応し、Exchangeサーバーを自動的に見つけてアカウントの設定をしたり、予定表と連動したメールを送受信したりできるようになる。
メールは通常の個人メールとExchangeメールを同じ画面で並列して扱えるようになる。従来のMac OS Xどおりの、優れたグラフィックス表現や、メール本文中の住所情報などを認識する機能などもきちんと踏襲しており、同僚の予定の空き時間をリアルタイムで確認してミーティングを設定する、と言ったExchangeならではの機能も利用できる。
革新を受け入れさせる低価格化戦略
全体の90%がブラシュアップされ、未来に向けての基盤技術を搭載し、家庭だけでなくオフィスで本格的に使うことも可能になるMac OS X “Snow Leopard”だが、最後にさらに衝撃的な発表があった。
これまでのMac OS Xの価格は129ドルだったが、Snow Leopardは、これだけの歳月をかけて開発し、これだけ手間をかけているにも関わらず、先の値段から100の位を取った29ドルで発売される(Mac OS X v10.5 “Leopard”からのアップグレード版)というのだ。
確かにMac OS Xには派手な新機能が少なく、技術に詳しくないユーザーは、なかなか導入しようというモチベーションが上がらないかもしれない。そこで、値段を大幅に下げ、一気に普及を広めようとするあたりに、Macのソフトウェア技術を先に押し進めようとするアップルの本気度が伺える。
なお、これはソフトウェアだけの進化ではない。Snow Leopardの機能は、インテルCPUを搭載したMacに最適化されており、それ以前のPowerPCを搭載していたMacでは利用できない。こやうやって過去のレガシーデバイスと決別していってこそ、技術を先に進めることができる。
1998年に発売されたiMacは、シリアルポートやSCSI、FDDといった技術を切り捨てることでUSBの普及に貢献した。革新を続け、よりすばらしい技術を生み出すためには、時折、それまで作ってきたものを見直し、古い技術と決別する必要がある。今回アップルは、その必要な切り捨てを断行するだけでなく、それでもなおユーザーがついてくるように、OSの価格も人気のノート型Macの価格も大幅に下げるということを同時にやってのけたのだ。
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