ソニーらしさはAndroidタブレットでも健在か?――「Sony Tablet S」徹底検証:発売記念・特大レビュー(9/9 ページ)
鳴り物入りで登場した「Sony Tablet」はAndroidタブレットの決定打になるのか? いよいよ本日発売の「S」シリーズ32Gバイト/Wi-Fiモデルをじっくり使ってみた。
ネットワークサービスの展開に期待大 勝負はまだ始まったばかり
以上、かなり長くなってしまったが、Sony Tablet S(32Gバイト/Wi-Fiモデル)について、ソニーがアピールする4つの特徴を中心に一通りチェックした。
OSのバージョンや基本スペックを眺めて、ほかのAndroidタブレットと似たり寄ったり、と判断するのは早計だろう。持ちやすさや使いやすさに配慮した独特のボディデザインをはじめ、最適化されたタッチスクリーン、ソニーが展開するネットワークサービスとの連携、そして家庭内のさまざまな機器と接続して使える拡張性と、ここまでハードとソフトの両面に周辺環境も含めて作り込まれたAndroidタブレットは皆無だ。
発売直後の現時点ではまだ利用できないネットワークサービスが多く、タブレットではこの部分が最大の差別化要因になることを考慮すると、その真価を発揮できるのはまだ先になり、製品の総合的な評価ができる段階ではないだろう。
とはいえ、それ以外の特徴をまとめるだけでも、Androidタブレットの中では頭1つ抜け出た存在といえる。フィーチャーフォンからAndroidスマートフォンに乗り換え、次はAndroidタブレットを欲しいなどと考えているユーザーにとって、Sony Tablet Sは実に魅力的な製品であることは間違いない。
気になる価格だが、9月17日に発売されたWi-Fiモデルのソニーストア直販価格は、ストレージ16Gバイトモデルが4万4800円、32Gバイトモデルが5万2800円となっている。Androidタブレットが各社から多数登場し、低価格化も進んでいる状況を考えると安価ではないが、購入後の長期的な活用まで考えると、この価格差なら満足度が高いのではないだろうか。
もっとも、この価格はアップルのiPad 2(16Gバイト/32GバイトWi-Fiモデル)と完全に一致しており、ソニーがAndroidタブレットのライバル機の先にあるiPadをより強く意識していることは明白だ。Androidタブレットとして完成度が高いSony Tablet Sだが、現在の非Windowsタブレット市場を創出し、世代を重ねて進化したiPad 2に比べると、やはり少々強気の価格設定にも思える。
特にiOSがすでに実現しているiTunesとiTunes Store、App Storeを組み合わせたシンプルで使いやすいユーザー体験、HD動画も含む安定したコンテンツの質と量、そして強力なユーザーの囲い込みといった統合的なサービス環境は、いまだにアップルだけのアドバンテージだ。今後はクラウドサービスのiCloudを開始し、そのエコシステムをさらに盤石のものにしようとしている。
もちろん、Androidならではの自由度の高い世界に引かれるユーザーも少なくないだろうが、ソニー自身がタブレット市場で成功するためには独自性が求められる。やはり今後のSony Tabletに最も必要なのは、映像と音楽の良質なコンテンツを多数有するソニーだけの“みんなが使ってみたくなる”ネットワークサービスの拡充にほかならない。
これまでソフトやサービス面も含めて、iPadに真っ向から対抗できる可能性があるタブレットが存在しなかったこともあり、少々厳しいことも述べたが、満を持して国内メーカーのソニーからこうした製品がリリースされたことは、ユーザーの1人として素直にうれしく思う。Sony Tabletの奮闘がタブレット市場をどう塗り替えるのか、そしてiOSとAndroidの勢力図にどのような変化をもたらすのか、勝負はまだ始まったばかりだ。
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